2016年8月5日(金)
韓国 「慰安婦」日韓合意 批判の声多く
財団設立も厳しい船出
少女像撤去 野党が強く反発
旧日本軍「慰安婦」問題に関する日韓合意(昨年12月28日)に基づいて韓国の「和解・癒やし財団」が7月28日、発足しました。現地からの報道によると、同財団の金兌玄(キム・テヒョン)理事長は同日の第1回理事会後の会見で、生存中の被害者40人と個別に面談したことを明かしました。合意への支持が広がっていると強調しましたが、当事者や支援者から、いまだ批判の声が上がっており、財団にとって厳しい船出となりました。
日本政府は合意に基づき同財団へ10億円を拠出します。日韓合意の際に、韓国政府が「適切に解決されるよう努力」するとした在韓日本大使館前の少女像の撤去について、金理事長は「10億円とはまったく別の話だ」と語り、拠出の前提条件ではないとの考えを示しました。
被害者らが反対
韓国の最大野党「共に民主党」は発足直後の声明で「発足直後から日本政府は10億円に関し、『賠償金ではない』という立場を示すなど、本音をあらわにし始めた」と指摘。第2野党「国民の党」も8月3日声明で、少女像は正しい歴史を語る象徴であり「どんな理由であれ撤去することはできない」と強調しました。
合意に反発している支援団体、韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会と、被害者が共同で暮らす「ナヌムの家」の関係者は7月27日に記者会見を開き、財団設立に反対の意思を表明しました。
ナヌムの家の安信権(アン・シングォン)所長は「日本の公式謝罪と法的賠償が含まれていない合意は無効であり、その合意のもとにつくられる財団は違法だ」と主張。支援者らは、被害者支援や資料の収集などを行う「正義記憶財団」を独自に設立しており、韓国政府に10億円を拒否するよう求めています。
世論「評価せず」
韓国のシンクタンク東アジア研究院が財団設立前に行った世論調査によると、日韓合意について「評価しない」が37・6%で、「評価する」が28・1%でした。評価していない理由として「当事者の意見が反映されていない」が66%と最も多く、「法的責任が明確でなく謝罪が不十分だ」とした人は51%でした。
財団の金理事長は、「財団を受け入れない方もいることは知っているが、意思疎通の努力を続ければいつかともに歩むことができる」と語り、被害者や支援者、世論に改めて理解を求めました。
(栗原千鶴)