2016年8月3日(水)
消費、投資の弱さ認める
経済財政白書 「賃金の伸びが重要」
石原伸晃経済財政担当相は2日の閣議に2016年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出しました。低迷が続く個人消費について、子育て世帯や60歳代前半で弱さがあると指摘。企業収益が拡大しているものの「消費や設備投資などの支出の増加に十分につながっていない」とし「国内需要が力強さを欠いている」としました。「アベノミクス」が描いた経済の「好循環」が起きていないことを事実上認めたものです。
白書は、若年子育て期世帯(世帯主が39歳以下)の消費支出がほとんど伸びていない原因について、(1)保育料や教育資金、社会保険料などの負担が発生し、将来も安定的に収入を確保できるのか不安(2)必需品価格の上昇が消費の下押し圧力となっている―などと分析しました。この年代は非正規比率が高く、近年上昇していることが将来不安を招いているとしました。
14年4月の消費税率引き上げは、高所得者層では引き上げ前に比べ5%程度の消費支出の落ち込みをもたらしました。低所得者層では10%程度と大きな落ち込みとなりました。白書は「実質所得の目減りによる消費への影響を緩和するためには、賃金や最低賃金の伸びを高めていくことが重要」と提起しました。
企業収益は大幅に改善しているものの、設備投資と売り上げは、リーマン・ショック以前の水準にとどまっています。危機以降にみられる企業収益の回復が主にコスト削減や円安による収益の押し上げなどによるもので、生産や売り上げが増加したものではなかったとしました。アベノミクスが実体経済の底上げにつながってないことを裏付ける分析です。利益配分については「人件費」への配分が危機前より減少し、「内部留保」への配分が増加していることを問題視しました。