2016年7月31日(日)
タイ新憲法案 国民投票まで1週間
二大政党党首が反対
軍の政治支配温存に批判
【ハノイ=松本眞志】タイで8月7日、軍事政権が提案した新憲法草案の是非を問う国民投票が実施されます。二大政党のうち、2014年5月のクーデターで政権を追われたタイ貢献党のチャルポン党首に続き、民主党のアピシット党首(元首相)も反対を明言。学生や法学者の団体も加勢しています。
草案は、国会を上下両院の二院制とし、下院議員は選挙で選ばれる一方、上院は軍政統治機構の国家平和秩序評議会(NCPO)が任命するとしています。首相は議員以外からも選出可能で、軍人首相の就任に道を開く内容。軍の政治支配を温存するものとなっています。
アピシット氏は27日の記者会見で、草案は国民の権利と自由を後退させるものだと批判。民主党重鎮のチュアン元首相も草案反対で足並みをそろえました。アピシット氏に近い民主党幹部は、「党首の訴えが理解されるならば、人々は草案反対の意思を示すだろう」と語りました。
民主党内でもステープ事務局長(元副首相)ら、クーデターを強く支持する勢力は草案賛成の立場。このほか、草案を否決すれば民政移管が遠のき、軍政の長期化を招くと主張する勢力もいます。
軍事政権のプラユット暫定首相は、「国民は自分で考えることができるし、他人の意見を聞く必要はない」とアピシット氏の発言に反発する姿勢を示しています。
憲法草案をめぐっては、軍事政権と民政移管を願う国民との間で攻防が続いています。
バンコク・ポスト紙によると、首都バンコクのタマサート大学で24日、草案に反対する法学者や学生を含む43の団体が結集し、国民投票で「草案に反対しよう」という声明を発表。法学者団体「ニティラット」のウォラチェット代表は、「草案が否決されれば、軍政の正統性も問われることになるだろう」と指摘しました。
プラユット暫定首相は、新憲法をめぐる議論を求める政党の訴えを拒否し続けています。草案に反対する動きを封じて市民活動家や学者などを相次いで拘束し、メディアに対しても規制を強めて活動停止や閉鎖に追い込んできました。
貢献党の基盤であるタイ北部でも弾圧が強まっており、貢献党の政治家が相次いで拘束されています。