2016年7月30日(土)
変革の風とウォール街
サンダース氏がもたらしたもの
「バーニー! バーニー!」。米東部フィラデルフィアで25〜28日に開かれた民主党全国大会の会場では、経済格差の是正やウォール街(金融業界)の規制を一貫して訴えるバーニー・サンダース上院議員を大統領候補に推す掛け声が連日聞こえました。
大会代議員の約4割はサンダース氏支持です。「少数者優遇の政治に反対」「ノーTPP(環太平洋連携協定)」「政治的大変革を」。両手に持ったプラカードを高く突き上げて、バーニー旋風を吹かせました。
カリフォルニア州の代議員、アレックス・カジェロスさん(29)もその一人です。「民主党の政策は若者の苦境を解決するには腰の引けたものが多かった。今回は僕らの思いが不十分ですが届きました。戸別訪問や電話かけをがんばりましたからね」とうれしそうに話します。
大きな変化
大会が採択した政策綱領は、最低賃金の引き上げや富裕層増税、ウォール街の違法行為の取り締まりなどサンダース氏の公約を取り入れました。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「(大統領指名候補の)クリントン氏は大きく変化した民主党を引き継ぐことになる」と指摘します。
フィラデルフィアの芸術大学で歴史学・政治学を教えるチャック・ペナッチョ准教授は本紙に「民主党は公民権運動を受けて1960年代半ばに最もリベラルになった。しかしその後は右へ右へと軌道修正してきた。今回の政策綱領には国民の運動が反映している」と変化を語ります。
ただ同氏は「サンダース氏の支持者の圧力がなければ、また右へと向かい始める危険がある」と強調。同党の抱える限界として「金権集団、大企業、軍需産業との連綿と続くつながり」を挙げました。
抱える矛盾
クリントン氏はウォール街を批判する一方で、ウォール街が最大の選挙資金源という矛盾を抱えます。米研究機関によると200ドル以下の個人献金は19%にとどまり、高額献金元の上位にはヘッジファンドや投資会社が並びます。
この矛盾は、党内の強い抵抗で政策綱領にTPP反対や公的な国民皆保険の全面実施などを明記できなかったことに表れています。安全保障の討論では、世界各地で米軍が行う作戦を手放しで礼賛する発言が相次ぎました。
多くの世論調査で、共和党指名候補のトランプ氏とクリントン氏の支持率はきっ抗しています。ペナッチョ氏は「クリントン氏が勝つには、政策綱領を実践する姿を見せ、街頭の声を聴くことだ」と指摘しました。(フィラデルフィア=島田峰隆)