2016年7月27日(水)
米大統領選 民主党大会 政策綱領を採択
最低賃金の引き上げ 富裕層へ課税を強化
【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)=島田峰隆】11月の米大統領選に向けて、与党・民主党の全国大会が25日、米東部ペンシルベニア州フィラデルフィアで始まり、最低賃金引き上げや富裕層増税などを掲げた政策綱領を賛成多数で採択しました。大会は4日間の日程で、クリントン前国務長官を大統領候補に指名する予定です。
TPP反対明記せず
政策綱領は、米国の現状について「庶民が低賃金で長時間働く一方、新たな収入や富が上位1%に集まるゆがんだ経済」だと指摘。連邦政府が定める最低賃金を時給15ドルへ引き上げることや労働者の団結権を支持すると明記しました。
また「経済的公正を取り戻すためにウォール街(金融業界)の強欲や無謀さとたたかう」と表明。金融取引税を支持し、富裕層への課税強化と労働者世帯の減税、ヘッジファンドなどによる課税逃れ防止を掲げています。
貿易をめぐっては「米国の雇用支援、賃上げ、安全保障の改善にならない貿易合意には反対する」と主張。環境保護や食品の安全などの基準を示し、「環太平洋連携協定(TPP)など、すべての貿易合意にこれらの基準を適用しなければならない」としました。
対外政策では「賢明な外交の活用」を強調。「米軍は世界で最強でなければならない」とする一方、戦地への派兵は「条件と達成すべき使命が明確なときだけだ」としています。核兵器の近代化については「過剰な支出を減らす」とするだけで推進姿勢です。
政策綱領は、最賃引き上げや公立2年制大学(コミュニティー・カレッジ)の無償化などを打ち出しました。ここ数年のファストフード労働者や大学生のたたかい、格差是正を中心に訴えて予備選で善戦したサンダース上院議員の政策を反映したものです。
サンダース氏の支持層には、TPP反対を明記しなかったことや環境政策をめぐり「不十分だ」という声もあります。政策綱領の採択時には「ノーTPP」のプラカードを掲げて抗議する代議員も目立ちました。
サンダース氏が演説
「政治的大変革」は継続中
【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)=洞口昇幸】当地で25日に始まった米民主党全国大会で、自称「民主的社会主義者」のバーニー・サンダース上院議員が演説し、大企業や富裕層から政治・経済体制をすべての米国民の手に取り戻す「『政治的大変革』は続いている」と訴えました。
サンダース氏が予備選・党員集会でヒラリー・クリントン前国務長官に匹敵する支持を獲得したことを反映し、登壇後も拍手と歓声がしばらく鳴りやみませんでした。
サンダース氏は「富裕層上位1%だけでない、われわれすべてを代表する政府をつくるためのたたかいは続いている」と強調。クリントン氏が大統領になれば、最低賃金の引き上げや雇用創出、異常な所得格差の解消、企業献金の規制強化、温暖化対策、社会保障や教育予算の充実などの政策分野で前進するとの展望を示しました。
また共和党のドナルド・トランプ大統領候補が最賃引き上げや温暖化対策、社会保障の充実を公約として掲げず、富裕層の減税を目指していることを批判しました。
同日採択された民主党の政策綱領についてサンダース氏は、「民主党の歴史上ずばぬけて最も進歩的」と評価。クリントン氏が大統領となり、民主党が上下両院の多数を占めて政策綱領を実行することが、「われわれの仕事だ」と呼び掛けました。