2016年7月24日(日)
パナマが89年米侵攻の調査委発足
国連支援 犠牲者特定・人権侵害解明へ
米軍が1989年12月、圧倒的な兵力と最新鋭の武器を投入して強行した中米パナマへの侵攻について、同国の学者ら5人をメンバーとする「真相調査委員会」が19日、国連の支援を受けて正式に発足しました。バレラ大統領の命令によるもので、犠牲者の特定や人権侵害の有無など真相を解明します。パナマ運河地帯の支配継続を企図した米国の身勝手な侵攻動機の不当性が改めて暴かれる可能性もあります。(桑野白馬)
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89年12月20日、米軍は2万6000人の軍隊を動員して、当時人口240万人のパナマに攻め込みました。この軍事作戦で500〜5000人のパナマ人が亡くなったとされていますが、正確な記録は残っていません。
現地からの報道によると、パナマのイサベル・サインマロ副大統領・外相は今月19日、「真実が明るみに出ない限り和解はない」と述べ、米国に対してパナマ侵攻に関連する非公開文書の公開を求めました。
委員会を取り仕切るサンタマリアラアンティグア大学のフアン・プアネルス学長は「犯罪や人権侵害の実態を暴き、このようなことが二度と起きないように勧告を出す」として、犠牲者に関する情報を寄せるよう国内外の人たちに呼び掛けました。
委員会の構成と目的について政府に意見も述べてきた「被害者の家族と友の会」のトリニダード・アヨラ代表は20日、委員会の設置を求めてきた長年にわたる「一つのたたかい」の帰結だと歓迎。「これから痛ましい、別のたたかいがはじまる」「望み続けてきた正義が実現されたと感じている」とコメントしました。
委員会は、今年の12月20日に第1回の報告書を公表する予定です。
米軍によるパナマ侵攻とは
1989年12月20日、米国のブッシュ政権は「独裁者ノリエガ将軍の逮捕、パナマ運河保全や米市民の生命を守るため」という口実でパナマへの侵攻を開始しました。
しかし、侵攻の真の目的は、パナマ国軍を解体し、運河地帯の支配を継続するため米軍駐留を永続化することにありました。そのことは、その後の多くの証言で明らかになっています。実際、米国の支援で作られた新政権のもとで、パナマ国軍は解体されました。
パナマ侵攻について当時の国際社会は厳しく非難。89年末の国連総会は「国際法の著しい違反」と断罪し、米軍の即時介入停止、撤退を要求する決議を圧倒的多数で可決しました。