2016年7月22日(金)
仏、解雇緩和など採択
3度目強行 労組・学生抗議続く
【パリ=島崎桂】フランスのバルス首相は20日、労働法改定案、通称「エルコムリ法案」について、憲法の規定を行使し、議会採決なしで採択しました。国民的な反発を受ける同法案の強行採択は3度目。これにより法案は最終的に可決されます。今年3月以来、同法案への抗議行動を主導してきた7労組・学生団体は、引き続き抗議行動を準備しています。
エルコムリ法案は、解雇規制の緩和や、賃金・労働時間に関わる雇用者の裁量拡大を企図しました。仏下院は20日、最終審議となる3度目の下院審議を開始。与党・社会党内からの造反などで過半数の賛成が見込めないバルス氏は、22日に予定していた採決日を待たずに今回も強行採択に踏み切りました。
バルス氏は議会演説の中で、法案の部分的な修正に応じた一部労組との合意を念頭に、「信頼に足る妥協に達した」と評価。法案は「国の将来のため不可欠だ」と改めて主張しました。法案採択に対し、フランス経団連(MEDEF)など経営者団体からは歓迎の声が上がっています。
一方、法案に反対する社会党や緑の党、左翼戦線(仏共産党と左翼党の共同会派)の議員58人は同日、仏紙ジュルナル・ドュ・ディマンシュ(20日付電子版)に寄稿し、「(法案反対の)たたかいは始まったばかりだ」と主張。3度にわたる強行採択は「議会無視」にあたるとして、憲法院に提訴する意向を示しました。
同法案に対しては、最新の世論調査でも約7割の国民が反対しています。
抗議行動を主導してきた仏最大労組・労働総同盟(CGT)のマルティネス書記長は、「国民の怒りは収まっていない」と強調。二大労組の一つ「労働者の力派」(FO)も声明で「(社会的な)後退を阻むのは力強い運動だけだ」と述べ、引き続く抗議行動を呼び掛けました。
法案に反対する7労組・学生団体はこれまでに、12回にわたる全国一斉抗議行動を始め、大小無数の運動を組織してきました。20日はバカンス期間ということもあり大規模行動は見送りましたが、9月15日にも再び全国規模の抗議行動を再開するとしています。