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2016年7月22日(金)

主張

リニア延伸前倒し

なし崩しの計画加速は危険だ

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 安倍晋三政権が、JR東海がすすめるリニア中央新幹線の建設加速と、そのために同社に公的資金を低金利で貸し付けることを決め、具体案を検討しています。リニア計画は2027年に東京―名古屋で開業し、45年に大阪まで延伸する予定ですが、政府が資金面でテコ入れすることで大阪開業年を前倒しさせようというものです。リニア計画では自然・生活環境の破壊、採算や安全性など問題が山積し、住民からは国に工事認可取り消しを求める訴訟も起こされています。疑問や異論にこたえず、リニア加速に熱を上げる安倍政権の姿勢は、あまりに危険です。

公的資金を低利貸し付け

 リニア中央新幹線計画は、東京(品川)―名古屋―大阪間のほとんどをトンネルでつなぎ、超電導磁石の力で浮上させた車両を時速500キロで走行させる構想です。安全性や、工事で排出される大量の残土、地下水の枯渇問題をはじめ自然環境への影響などを危惧する声が相次いでいるにもかかわらず、安倍政権は14年、東京―名古屋の事業を認可しました。JR東海は品川や名古屋の駅整備、用地取得などに着手しています。

 安倍政権は、これまでもリニア計画を「成長戦略」で位置づけてきましたが、総額9兆円とされる膨大な建設費用はJR東海が自前で賄うことが前提でした。しかし、この計画では東京―名古屋開業後、それまでかかった工費約5兆5千億円の債務を8年かけて減らしたあと大阪までの延伸工事を始めるという予定のため、リニアを推進する財界などから大阪延伸前倒しを求める声が上がっていました。

 安倍政権の前倒し決定は、これらの要求に沿ったものです。JR東海の負担を減らすため、国が資金を調達し低利で貸し出す「財政投融資」の仕組みを使い、約3兆円を貸し付ける案が検討されています。金利は民間銀行よりも、はるかに低い0・3〜0・4%程度に優遇する方向です。「マイナス金利」の“効果”を宣伝したい安倍政権の思惑もみえます。

 住民が認可取り消し訴訟を起こすなど批判や異論が相次いでいるリニア計画を加速させるため、ここまで肩入れする安倍政権のやり方は、危険すぎます。リニア計画には環境省も「環境影響は枚挙にいとまがない」と警告する意見を出していますが、問題はなんら解消していません。そのうえ、人口減少社会に入っている日本で、利用者数の将来見通しも不安視され、リニア事業の採算性そのものに疑問が投げかけられています。南アルプスを巨大トンネルで貫く難工事については、費用の肥大化が懸念されています。巨額な公的資金を貸し付けたリニア事業が行き詰まり、そのツケが国民の負担として押し付けられる―。そんな危険が現実になりかねません。

中止・見直しこそ必要

 破綻した「アベノミクス」の加速のため、問題だらけのリニアを使うことは国民の願いに反します。

 住民訴訟に続き、南アルプスの自然をリニアで壊すなと幅広い登山家らの署名活動も新たに始まっています。国とJR東海は計画を加速するのでなく、凍結・中止に向けた検討こそすべきです。公費を使うというなら、国会での徹底審議は不可欠です。なし崩し的に公的資金を投じるようなやり方は許されるものではありません。


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