2016年7月12日(火)
南シナ海問題 仲裁裁きょう判決
比が提起、中国は認めず
【北京=小林拓也】南シナ海問題をめぐりフィリピンが提起した国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判決が12日に出されます。南シナ海についての初の司法判断となる今回の判決について、中国は「いかなる判決であれ承認しない」との強硬な姿勢を崩していません。他方、フィリピン側は判決後に中国との直接対話を行う意向も示しています。
仲裁判決は、国連海洋法条約に基づき、中国の南シナ海での人工島造成の基盤となる岩礁が排他的経済水域(EEZ)を生じるかどうかなどについて判断します。南シナ海の大部分に中国の主権が及ぶとする「九段線」についても判断が出る可能性があります。
中国メディアによると、中国海軍は8日、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島周辺で、実弾による軍事演習を実施。約100隻の艦艇、数十機の航空機が参加しました。10日付の中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は「実戦的演習で、海洋権益と領土を守る決意を示した」とする専門家のコメントを掲載しました。
中国の戴秉国(たいへいこく)前国務委員は5日、ワシントンで講演し、仲裁裁判に関し「結果が出るなら出ればいい。どうということはなく、一枚の紙くずにすぎない」とけん制しました。
11日付の人民日報は1面の論評で、仲裁裁判に対する中国の立場を約70カ国が支持していると強調。その上で「フィリピンの一方的な仲裁裁判への提起、仲裁裁判所の違法な権利乱用は、国際法を破壊するものだ」と批判しました。
一方、6月末に就任したフィリピンのドゥテルテ大統領は、中国と対話する意向を示しています。同国のヤサイ外相は8日、仲裁裁判の判決後、早期に中国と直接対話する方針を表明しました。
南シナ海問題に詳しい上海国際問題研究院の薛晨(せつしん)助理研究員は「双方に対話の意欲があり、フィリピンとの対話を通じた問題解決の進展も期待できる。しかし、判決の結果にフィリピンがどう反応するのか、米国などの域外国がどう対応するのかなどを見極める必要があり、実際に対話が進むのかは不確定な部分も多い」と語ります。