2016年7月11日(月)
NATO首脳会議 あらゆる脅威に抑止強化
共同宣言採択 ロシアとの対話継続
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【ワルシャワ=NATO首脳会議取材団】8、9の両日にポーランドの首都ワルシャワで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、「あらゆる方向からの脅威に対して抑止と防衛を強める措置をさらに取る」とする共同宣言を採択しました。ロシアに対する抑止を強調する一方で、同国を孤立させず、対話を継続する姿勢も打ち出しました。
バルト3国とポーランドに来年以降に展開する大隊は切れ目なく交代し、事実上の常駐態勢となります。ロシアによるウクライナへの軍事介入を受けてロシア対応重視へと活動の軸足を移した前回首脳会議の決定を具体化する動きです。
NATOのストルテンベルグ事務総長は「21世紀の課題に対する21世紀の抑止力だ」と指摘。オバマ米大統領は、バルト3国とポーランドへの部隊配置の合意など「NATOはすべての同盟国を守るという明確なメッセージを送った」と強調しました。
ただ、ロシアと直接国境を接する国に部隊が常駐することは「(ウクライナでやったように)ロシア軍がこれらの国々を侵略すれば即座にNATO軍と接触することになる」(米紙ニューヨーク・タイムズ)と懸念も出ています。
ロシアのペスコフ大統領報道官は「ロシアから脅威が押し寄せているという議論はばかげている。ロシアはNATO諸国との国境に近づいてはいない」と反発しています。
首脳会議の宣言は「NATOの立場を明確に伝え、軍事的な事故の危険を最小にするためにロシアと有意義な対話をする準備がある」としています。今月13日にはNATOロシア理事会を早速開きます。
ドイツのメルケル首相も「抑止と対話は不可分だ。シリア問題で米ロが理解し合うように、NATOとロシアの調整は双方の利益になる」と指摘。フランスのオランド大統領も「ロシアは敵や脅威ではなくパートナーだ」と強調しました。
宣言は、過激組織ISによるテロなど「われわれの国境を超えた不安定の弧」があるとし、「中東や北アフリカとの政治対話や実践的な協力を強める」としました。米国主導の有志連合によるイラクでの活動を支援するために早期警戒管制機(AWACS)を派遣することを正式に決めました。
市民が抗議デモ
ワルシャワ
【ワルシャワ=NATO首脳会議取材団】北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開かれたワルシャワで9日、NATOに抗議するデモが行われました。軍事同盟に反対する国際ネットワーク「NATOにノー」が主催したもので、欧米10カ国から約200人が参加しました。
デモ参加者は、「戦車ではなく貧困対策に支出を」などと唱和しながら市内を行進。在ポーランド米大使館前では、「(2003年の)イラク戦争開戦の誤りを忘れるな」と訴えました。
デモに参加したエラ・ゼブローシュカさん=ワルシャワ在住=は、NATO軍がポーランドに事実上の常駐を決めたことに懸念を示し、「軍備増強は緊張の激化を招くだけ。ポーランドがNATOの対ロシア前線基地にならないよう各国の人々と協力して反対の声を強めていきたい」と語りました。