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2016年7月7日(木)

南シナ海問題 中国の活動 国際法が問う

仲裁裁判所 12日に判決

「九段線」どう判断

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 南シナ海での中国の活動や権利の主張は国際法に違反するとしてフィリピンが提訴した裁判で、常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が12日に判決を出します。国際的な裁判所が南シナ海問題で法的拘束力を持つ判断を示すのは初めてです。(面川誠)


 南シナ海は石油・天然ガスをはじめとする海底資源があり、豊かな漁場でもあります。中国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイが島しょの領有権を主張。各国が主張する境界線は重なり合い、争いが絶えません。

境界判断求めず

 なかでも中国は、南シナ海の大部分を囲う「九段線」と呼ばれる境界内に自国の権利が及ぶという立場です。

 フィリピンが中国の行為を違法だと主張する根拠は、「海の憲法」と呼ばれる国連海洋法条約。沿岸国が主張できる権利を定めた国際法で、中国とフィリピンも締約国です。

 フィリピンは2013年1月、中国が同条約に違反する活動と主張を行っているとして、15項目にわたる訴えを仲裁裁判所に起こしました。大きく整理すると次のような内容です。

 ▽中国の「九段線」は海洋法条約上の根拠がなく違法である。

 ▽中国が実効支配したり、人工島を築いたりした岩礁で、「岩」や干潮時だけ海面上に現れる「低潮高地」は排他的経済水域(EEZ)、大陸棚の権利を生まない。

 ▽中国の行動はフィリピン漁民の操業を妨害し、海洋環境を破壊している。

 今回の裁判は、フィリピンと中国の領海の線引きといった海洋の境界を画定するものではありません。海洋法条約は、締約国が「海洋境界画定の仲裁裁判を受け入れない」と宣言することを認めており、中国は2006年にこれを宣言しているからです。このためフィリピンの提訴も領有権争いや境界画定についての判断は求めていません。

中国は仲裁拒否

 領有権や境界画定そのものについての判断は示されませんが、判決が海洋法条約に基づいて「九段線」を認めなかったり、「低潮高地」であることを理由に権利の主張を認めなかったりすれば、中国の行動や主張の多くは国際法上の根拠を失うことになります。

 中国は仲裁を受け入れないとの立場を繰り返し、裁判への参加を拒否してきました。しかし海洋法条約によれば、一方が欠席しても仲裁裁判は進行します。海洋法条約の締約国である中国は、判決に従う義務があります。

 2002年に中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が合意した「南シナ海行動宣言」(DOC)も、海洋法条約を含む国際法に従って問題を解決すると明記しています。

 フィリピン外務省は6月30日に声明を発表し、「判決を全面的に尊重する」と表明し、中国に対して「仲裁手続きの当事者であり、判決に拘束される」と判決内容を受け入れるよう求めました。

一方的現状変更と緊張高める行動

日本共産党は中国に中止要求

 日本共産党の志位和夫委員長は4月10日、第5回中央委員会総会の幹部会報告で、中国による南沙(英語名スプラトリー)諸島での人工島造成とレーダー設置、西沙(英語名パラセル)諸島でのミサイルや戦闘機の配備を挙げ、「南シナ海での一方的な現状変更と軍事的緊張を高める行動を中止するよう求める」と述べました。

 中国の行動は、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国による「南シナ海行動宣言」(DOC)に反しています。DOCは「紛争を複雑化あるいは激化させ、また平和と安定に影響を与えるような行動を自制する」と規定しているからです。

 志位氏は、ASEAN諸国がDOCの履行と、これを法的拘束力のある「南シナ海行動規範」(COC)に発展させる努力を続けていると述べ、南シナ海問題の解決方法は「対話に徹すること」だと強調しました。

 また、安倍晋三首相が戦争法(安保法制)の成立を受け、昨年11月の日米首脳会談で、南シナ海問題で日米の連携を強化し、自衛隊の派遣について「検討する」と表明したことに触れ、「この地域での戦争法の発動は、事態の解決に貢献しないだけでなく、軍事的緊張を高める結果にしかならない」と警告しました。


国連海洋法条約 海洋の法秩序の基本となる条約で、1994年11月に発効。領海(12カイリ)、排他的経済水域(EEZ=200カイリ)、大陸棚などの法的根拠や、海洋の利用に関する各国の権限について規定。▽自然に形成された「島」は領海、EEZ、大陸棚を設定できる▽人が住めない「岩」は領海だけ設定できる▽干潮時だけ海上に現れる「低潮高地」は領海を原則設定できず、EEZと大陸棚も設定できない▽人工島は領海、EEZ、大陸棚の権利を生まない―と定義。国際裁判による法的拘束力を持つ紛争解決手続きも定めています。


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