2016年6月7日(火)
アジア安保会議 平和の枠組みを議論
ASEANの役割評価
シンガポールで3日から5日まで開かれたアジア安全保障会議(主催、英国国際戦略研究所=IISS)と関連会合で、アジア・太平洋地域での平和の枠組み構築が積極的に論議されました。各国代表が強調したのは、東南アジア諸国連合(ASEAN)が果たしている積極的な役割です。(シンガポール=松本眞志)
北東アジアに努力求める声も
シンガポールのバラクリシュナン外相は5日、IISS主催の「東南アジア青年指導者会合」の昼食会で講演。アジア安保会議で「南シナ海での紛争にかんする議論がこれまでになく多く行われた」と述べ、米国、中国、東南アジア諸国を巻き込んだ緊張の高まりに懸念を示しました。
同外相は、「一方の利益が他方の損失となる“ゼロサム”思考の回避が重要だ」と主張。来年創立50周年を迎えるASEANの下で、異なる宗教や民族、文化をもつ国々が全会一致(コンセンサス)の原則を形成してきたと評価しました。
「戦争解決」排除
ASEANが困難を抱えながらも今日まで発展してきた背景には、「加盟国の間で、戦争による問題解決の考えを排除してきた」ことがあると強調しました。
ASEANは加盟10カ国だけでなく、ASEAN地域フォーラム(ARF)や東アジア首脳会議(EAS)など日米中を含む地域協力の枠組みづくりを促進。戦争を放棄した東南アジア友好協力条約(TAC)への日米中などの加入も実現させ、武力に頼らない紛争解決の規範を広める努力を続けています。
カーター米国防長官はアジア安保会議で、「原則的安全保障のネットワーク」を提唱し、域内の軍事同盟強化を主張する一方で、「ASEAN中心の安全保障ネットワークが発展している」と認めました。
孫建国・連合参謀部副参謀長をはじめとする中国からの参加者も、ASEANと中国が領有権紛争の平和的解決などで合意した南シナ海行動宣言(DOC)の履行や、これに法的拘束力を持たせる南シナ海行動規範(COC)締結への努力を言明しました。
南シナ海で中国と領有権を争う当事国、ベトナムのグエン・チ・ビン国防次官は、中国との紛争への懸念を強めつつも、「ASEANは、現在の地域安全保障機構における指導的役割を担っており、その結果として、この地域では平和と安定、共同と発展が主流となった」と語りました。
マレーシアのヒシャムディン国防相は、同国の安全保障政策がASEANの原則の上に立っていると述べ、「(ASEAN中心の)安全保障機構によって発展してきた地域の価値を固守する必要がある」と訴えました。
6カ国協議再開
一方で、北朝鮮の核・ミサイル問題に関しては、韓国の韓民求(ハン・ミング)国防相が、既存の安全保障の枠組みが十分な機能を発揮していないと指摘しました。
会議の参加者からは、北朝鮮の6カ国協議への復帰、中国の北朝鮮への影響力行使、関係国による問題解決に向けた真摯(しんし)な対話の実現など、北東アジアなど各国の積極的な努力を求める意見が相次ぎました。