2016年5月26日(木)
「この苦しみ もう誰も…」 自殺米兵の遺族 切々と
「悲劇の原因は不正義の戦争」
NYで反戦団体 体験を聞く催し
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【ニューヨーク=島田峰隆】イラクやアフガニスタンの戦争に派遣され、帰国後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患ったり、自殺したりした米兵の家族の体験を聞く催しが22日、ニューヨーク市内で開かれました。遺族らは、子どもの頃の家族写真や思い出の品を手にして涙を流しながら、「もう誰にもこんな経験をしてほしくない」と訴えました。
米兵家族の反戦団体「声をあげる兵士家族の会」(MFSO)が主催しました。米国ではイラクやアフガンからの帰還兵の自殺が後を絶たず、社会問題になっています。
トレイシー・アイスワートさんの夫、スコットさんは2004年にイラクに派兵されました。「派兵中は“遺体袋に入って帰ってきたらどうしよう”とニュースを見たりするだけで恐怖感に襲われました」とトレイシーさん。スコットさんは05年11月に無事帰国したものの、数日後には悪夢、感情の激しい浮き沈み、不眠、戦場を突然思い出すフラッシュバックに苦しむようになり、08年に自殺しました。
陽気な性格だったスコットさんが戦場を経て変わり果て、「まだ小さかった娘は彼を怖がり、“昔のようなお父さんに戻ってほしい”と語っていました」と振り返るトレイシーさん。「私の子どもたちは父親なしで生きなければなりません。8年たっても苦しみは消えません」と声を詰まらせました。
ジョイス・ルーシーさんは、輸送任務でイラクに派兵された息子が帰国後の04年に自殺した経験を発言。「殺害に責任を感じ、道徳的な傷を負っていたと思います。こんな苦しみを皆さんの誰にも味わってほしくない」と強調しました。
イラクに2回派遣された息子がPTSDや外傷性脳損傷(TBI)に苦しんでいるティム・カラーさんは、戦場では戦闘に慣れていない兵士までも「狙撃兵が子どもを撃ち殺す場面」などに直面することになると指摘。「米兵がPTSDに苦しむ原因の一つは、もともとこれらが不正義の戦争だからだ」と語りました。
現役の米兵だった息子が昨年自殺したマーシャ・ウェストブルックさんは「自殺の悲劇をなくすには、不正義の戦争をやめて、帰還兵をつくらないようにすることだ」と力を込めました。