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2016年5月26日(木)

主張

出生率1.46

「子育て不安」社会の打開こそ

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 2015年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの人数の推計)は1・46だったと厚生労働省が発表しました。前年比0・04ポイント増の2年ぶりの増加ですが、人口維持に必要とされる2・07を下回る状況は変わらず、少子化に歯止めはかかっていません。

 結婚、出産、子育てを多くの若者が希望しているのは、政府のこの間の調査ですでに明らかです。その願いが実現できない日本の現実が、なかなか変わらないことは深刻です。若者の希望を妨げる「壁」を取り除き、安心して子育てできる社会の実現へ、抜本的な打開策を講ずることが急務です。

少子化に歯止めかからず

 日本の合計特殊出生率は1989年に初めて1・6を割り込んで以降、本格的な回復傾向を見せていません。今回の1・46は、いままで出産を控えてきた30歳代〜40歳代前半の出産が増えたことなどから、21年ぶりの高い水準となりました。しかし、フランス1・98、スウェーデン1・88などとの差は依然大きく、日本が世界でも有数の「出産・子育てが困難な国」である実態は変わりません。

 内閣府が行った結婚・子育てについての国際的な意識調査では、「希望する人数まで子どもを増やしたいか」という質問に対し、日本では4割以上が「増やさない」「増やせない」と回答しました。フランスやイギリスなどでは2割〜1割弱にとどまっているのに、日本で“あきらめる”人たちが突出していることは深刻です。「結婚への不安」についての質問では、日本では「お金」や「親の介護」と答えた人が、他国より多い結果となりました。経済的負担の大きさや社会保障への不信などが、結婚・出産・子育ての大きな壁になっていることを示しています。

 国民は、この現状を変えることを痛切に求めています。「保育園落ちたの私だ」という怒りの声があがり、子育て支援に消極姿勢だった安倍晋三政権に対し保育所増設をはじめ安心して子育てできる環境整備の実現を迫る動きが広がったのも、そのあらわれです。

 妊娠が分かったとたん、「保活」といって保育所探しに必死に駆け回らなければならない。子どもが保育所に入れず「待機児」となり仕事に復帰できない―。こんな事態は異常というほかありません。

 長時間過密労働や低賃金・不安定雇用の非正規労働が一向に改善されない社会で、結婚、出産、子育てに希望が持てるはずはありません。1990年以降、「少子化」が問題になっていたのに、国民に負担と犠牲を強いる「構造改革」「規制緩和」などを押しつけてきた歴代政権の責任はきわめて重大です。大企業優先の政治からの根本的な転換がいまこそ必要です。

かけ声だけの政治でなく

 安倍政権は近く、「希望出生率1・8」実現などを盛り込んだ「1億総活躍プラン」を閣議決定する予定ですが、従来型の発想で事態を打開する裏付けも道筋もみえません。保育所増設のカギを握る保育士の処遇改善もあまりに不十分で、関係者を失望させています。

 戦前戦中の「進め一億」を想起させるような勇ましいスローガンで国民をあおりたてる政治に希望はありません。国民一人ひとりが大切にされ、子どもがいる人も、いない人も、豊かな暮らしが保障される政治の実現が重要です。


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