2016年5月25日(水)
オーストリア大統領選 左派候補が勝利
大接戦 極右阻む
【パリ=島崎桂】22日投票のオーストリア大統領選(任期6年)第2回投票で23日、左派・緑の党のファンデアベレン前党首(72)の勝利が確定しました。「反難民」を掲げる極右・オーストリア自由党(FPO)のホーファー国民議会(下院)第3議長(45)との大接戦を制し、欧州連合(EU)初となる極右政党出身の大統領誕生を阻みました。環境政党出身の大統領はEU初で、7月8日に就任する見通し。
22日の開票作業では、ホーファー氏が約52%、ファンデアベレン氏が約48%を得票。23日に開票された約90万票(有権者の約14%)の郵送票が勝敗を左右しました。同国内務省の発表によると、ファンデアベレン氏は50・3%を得票。49・7%を得たホーファー氏との得票差は、わずか1万6000票余りでした。
選挙戦でホーファー氏は、欧州に流入する難民や、各国への難民割り当てを決めたEUを批判。対するファンデアベレン氏は、難民保護や「多様で開かれた社会」の実現を求めたほか、「ナショナリズムの狂気は国家を破壊する」として反極右勢力の結集を呼び掛けました。
4月24日の第1回投票で落選した2大政党、社会民主党と国民党は、公式な態度表明は見送ったものの、多くの党幹部がファンデアベレン氏を支持。72・7%に達した投票率も同氏への追い風となりました。
欧州では昨年来、難民流入阻止や反難民を掲げる政党が支持を伸ばしています。各国で2大政党を構成する中道右派、中道左派政党の退潮傾向も続いており、今回の選挙は欧州各国が注目していました。
22日に仏テレビTF1に出演したサルコジ前仏大統領は、オーストリアでの2大政党の後退に触れ、「(中道)右派も左派も存在しない場合、極右が利益を得る」と指摘。近年支持を伸ばす仏極右・国民戦線(FN)を念頭に、「オーストリアで起きていることは、フランスでも起こり得る」との見方を示しました。