2016年5月21日(土)
台湾 初の女性総統 就任
「一つの中国」はふれず
【台北=小林拓也】1月の台湾総統選挙で勝利した民進党の蔡英文(さいえいぶん)主席(59)は20日、台北市内の総統府で就任宣誓し、台湾総統に正式に就任しました。台湾で初の女性総統です。
集まった数万人を前に就任演説した蔡氏は中国大陸側に対し、「両岸(中台)の二つの政権党は歴史の荷物を降ろし、対話を進め、人民に幸福をもたらすべきだ」と呼び掛けました。その上で、「地域の発展に関わる共通の課題で誠意ある意見交換をし、協力の可能性を追求していきたい」と述べました。
一方「一つの中国」を双方が認め合ったとする「92年合意」の受け入れについては明確に言及しませんでした。中台関係に関し、「1992年に両岸の窓口機関が協議し、若干の共通認識と了解を達成したという歴史的事実を尊重する」と述べるにとどめました。今後の中台交流の基礎として、(1)92年の会談の歴史的事実(2)中華民国の憲法体制(3)過去20年の交流の成果(4)台湾の民意―の4点を挙げました。
中国大陸側は、独立志向が強いとされる民進党の8年ぶりの政権奪還を警戒。「92年合意」が交流の基礎だという姿勢を崩していません。
また蔡氏は、東シナ海・南シナ海問題に関し、「主権と領土を守る責任がある」と強調した上で、「争いを棚上げし、共同開発を進めるべきだ」と表明しました。
台湾では近年、馬英九前政権の経済政策や強権的な政治手法に批判が高まり、多くの学生や若者が街頭で声を上げました。民進党は若者の支持を獲得し、1月の選挙では立法院でも過半数の議席を獲得。就任演説で蔡氏は「若者の苦難の解決は新政府の重大な責任だ」と訴えました。
大学1年生の洪馨(こうけい)さん(18)は「2年前の学生運動で多くの若者が立ち上がり、その後は投票で政治を変えた。民進党はこの声を受け止めてほしい」と語りました。