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2016年5月18日(水)

2016 焦点・論点

要介護2以下の福祉用具レンタル自己負担増案

日本福祉用具供給協会理事長 小野木(おのぎ)孝二 さん

重度化防いできた自負 全額払える人限られる

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 安倍政権がすすめる介護保険制度の連続改悪で、財務省は福祉用具レンタルにつき、要介護2以下の利用者は「原則自己負担」とし、「保険給付の割合を大幅に引き下げる」と提案しています。要支援1から要介護2までの利用者約110万人が影響を受けます。この問題について、福祉用具レンタル業者でつくる日本福祉用具供給協会(加盟350社)の小野木孝二理事長に聞きました。 (内藤真己子)


 ―介護保険で福祉用具レンタルはどんな役割を果たしていますか。

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 われわれが貸しているのはモノではなく機能です。手すりや歩行器を使えば高齢者が24時間、家族やホームヘルパーの世話にならずにトイレに行くことができます。残された力を使って自立を促し、生活の質を上げる価値を持っています。

 またサービスは山間へき地でも離島でも、全国に行き渡っており、介護保険の基本部分を担っていると考えています。

ベッド・車いすも

 2006年に要支援1〜要介護1の人は、原則ベッドや車いすが利用できなくなりました。それでもこの方々の24〜38%が何らかの福祉用具レンタルを利用されています。

 ベッドや車いすも借りられる要介護2では、利用率は56%と居宅で一番利用されているサービスです。要介護3以上になると6〜7割の方が利用していますが、福祉用具レンタルの介護給付費は総額2725億円で全体の2・8%にすぎません。わずかな経費で自立を促進し、重度化を防いできたという自負があります。

 ―「原則自己負担」になると、利用者にどういった影響を与えるでしょうか。

 財務省は初めに利用者さんにレンタル料の全額を払ってもらい、後で保険給付分をある程度返金するといいます。しかし毎月発生する費用です。全額払える方はかなり限られるのではないでしょうか。それに毎月の返金は、事務作業からいっても不効率だと思います。

家族の介護負担 増える

 協会では昨年末「利用している福祉用具の代替手段に関する調査」を5種、500人の方に実施しました。

転倒事故増加も

 福祉用具を利用する前、移動時に「転倒したことがある」人は各種目で5〜8割に及びました。一方、9割前後が利用によって「転倒の不安や困難が軽減した」と答えています。

 また「福祉用具が利用できなくなった場合」の対応を尋ねると「介助者を依頼する」か「その行動はあきらめる」が圧倒的でした。たとえば電動ベッドが利用できなくなった場合、「起き上がり」は約4割が「介助者を依頼する」と答え、介助者の6割が家族や親せきでした。

 福祉用具の利用が抑制されると転倒する人が増え、骨折して寝たきりになる人が増えると予想されます。自立した行動も制限され重度化が進むでしょう。国は介護費用を下げたいのでしょうが上がってしまう。本末転倒ではないかと思います。

世論に訴えたい

 ―業界にも大きな影響が予想されますね。

 福祉用具レンタル利用者の6割が要介護2以下で、売り上げの4割を占めます。もし、これが全部なくなったら事業は成り立ちません。倒産するところが相当出るでしょう。そうすれば、へき地などサービスが使えない場所が出てくる可能性があります。

 福祉用具レンタルの1件当たり費用の平均額は下がってきています。電動ベッドは10年前、給付額が月1万2000円近くしていましたが、いまは1万円以下になりました。歩行器や車いすなどは性能がどんどん上がっているにもかかわらず、単価は下がっています。財務省は「競争原理が働いていない」と言いますが、その批判は当たりません。

 ―今回の制度見直しには大きな問題がありますね。

 そうですね。制度改正ではなく改悪だと思います。安倍首相は「1億総活躍社会」と言われていますが、福祉用具を使えなくして家族の介護負担が増え、離職することにでもなったら逆じゃないですか。

 三重県議会では福祉用具レンタルなどの「継続を求める意見書」が可決されています。業界としても世論に訴え、継続されるよう求めていきたいと思います。


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