2016年5月17日(火)
主張
舛添都知事の疑惑
都民の批判に応える姿勢ない
東京都の舛添要一知事が家族旅行の宿泊費や私的な飲食費を政治資金から支出していたと週刊誌で報道され、知事は一部の事実を認め、返金する意向を明らかにしました。家族と宿泊した部屋で事務所の関係者らと「緊急かつ重要な会議」を開いたから「政治活動」だが、「政治的な機微」に触れるので参加者は明らかにできない、誤解を招いた以上政治資金収支報告書は訂正し返金するというだけです。全くつじつまがあいません。こんな知事の説明で納得できる都民・国民は皆無です。舛添氏が政治家としての責任を果たすことがますます求められます。
公私混同もはなはだしい
先週の週刊誌が報道した舛添知事の政治資金にかかわる疑惑は、政治資金で家族旅行のホテル代や飲食費などを負担していたというものです。政治資金収支報告書は政治家が資金の流れを公表することで、自らの政治活動が国民の「不断の監視と批判の下」(政治資金規正法第1条)におかれるようにするためのものです。報告書の虚偽記載や政治資金の流用、公私混同などあってはならないことです。
舛添氏が、報告書に記載した家族旅行のホテル代を、ホテルで関係者と会議を開いたから「政治活動」だったと言い張るのは、政治活動でなければ、政治資金規正法で重い罪が科せられる「虚偽記載」に触れることを恐れるためではないのか。しかし「政治活動」だと言いながら「機微に触れる」からなどと出席者の人数すら公表できないというのは通用しません。報告書の訂正や返金などでごまかすのではなく、都民の前に率直に事実を明らかにすべきです。
家族旅行のホテル代だけにとどまらず、てんぷら店や回転ずし店などでの飲食代など、舛添氏が返金を認めたものも、返金を認めなかったものも、舛添氏の政治資金収支報告には疑惑と問題点が山積です。だいたい毎日の飲食代まで政治資金と計上することが適切なのか。舛添氏には政治資金という公的な資金を取り扱うまともな姿勢は見られず、公私混同の疑いは根深いものがあります。
家族旅行先のホテルでの会合が「政治活動」だという舛添氏の説明にも見過ごせないものがあります。舛添氏が政治資金で支出したのではないかと批判されている家族旅行のうち1回(2014年1月)は、自民党の参院議員などを務めた舛添氏が、前東京都知事の猪瀬直樹氏が5千万円に上る裏献金疑惑で辞任したあとの知事選への出馬が取りざたされていたさなかです。関係者との会合ではそのことも論議されたとの説明です。
前知事が「政治とカネ」の問題で批判を受けて辞任したのに、その後で知事に就任し、政治資金収支報告書をごまかして提出することにちゅうちょなかったのか。政治家としての資質にかかわります。
海外出張費問題など渦中
重大なのは、舛添知事の政治資金疑惑が、東京都議会で日本共産党東京都議団などが指摘してきた巨額の海外出張費問題や週刊誌が指摘した公用車を使った「別荘」通いなどが批判されるなかで発覚したことです。都民の税金を食い物にする巨額の出張費や公用車の私物化などが許されないのは明らかです。そうした問題の渦中におきた舛添氏の政治資金疑惑はいっそう厳しく追及されるべきです。