2016年5月16日(月)
台湾新総統20日就任へ
「一つの中国」言及が焦点
【台北=小林拓也】台湾民進党の蔡英文主席が20日、台湾総統に就任します。独立志向が強いとされる民進党ですが、中台双方が「一つの中国」を認め合った「92年合意」について、20日の就任演説で蔡主席が明確に言及するのかに注目が集まっています。
「『92年合意』の不承認は、両岸(中台)関係の政治的基礎を壊すものだ」。5日付の中国共産党機関紙・人民日報は1面の評論員論文で、蔡主席が「92年合意」を承認するよう要求。論文は、合意を否定すれば、「中台の政治的相互信頼と協議メカニズムが崩れる」とし、「責任と結果は民進党当局が負うことになる」と警告しました。
蔡氏が台湾総統に当選した1月の選挙以降、すでに中台間にさまざまな問題が起きています。4月、詐欺などの疑いでケニアで国外退去処分などを受けた台湾住民が相次いで中国大陸側に引き渡され、台湾側が抗議。同月、経済協力開発機構(OECD)鉄鋼委員会への台湾のオブザーバー参加に対し、中国大陸側が抗議し、参加が見送られる事態も起きました。
台湾が6日に受け取った23日開会する世界保健機関(WHO)年次総会の招待状の中に、例年にない「一つの中国」原則に関する文言が盛り込まれ、民進党は「政治干渉は受け入れられない」と大陸側に抗議しました。
また、大陸から台湾への観光客が5月に入り前年同期比で3割減。中台関係の状況によってはさらなる減少も予測されます。
ただ、「台湾独立」を主張する人々の支持も受ける民進党が、「一つの中国」を明確に認める可能性は低いと見られます。台湾メディアによると、台湾中央研究院の胡勝正研究員は4月、蔡氏の就任演説に関し、「『92年合意』には触れないが、1992年に会談があったという歴史的事実は認めるだろう」との予測を発表しました。
中国清華大学台湾研究院の鄭振清准教授は「92年の会談で双方が合意に達したことが重要であり、会談の事実を認めるだけでは大陸側の要求を満たせないだろう」と指摘。「大陸側の意志は固く、蔡氏が合意を認めなければ、中台関係は動揺し、危機に陥るだろう。8年間の中台の平和発展は、20日に転換点を迎える」と語っています。