2016年5月15日(日)
米徴税当局の「国別報告書」義務化案
大企業税逃れを抑止
公聴会 市民団体賛意「公表も」
【ワシントン=島田峰隆】米国で徴税業務を所管する内国歳入庁(IRS)は13日、多国籍企業による課税逃れを防ぐため、事業活動の「国別報告書」の提出を義務付けるとする同庁の対策案について、ワシントンで公聴会を開きました。公正な税制度を求める市民団体の代表らが、報告書の公表も義務付けるよう求めました。
IRSが昨年末に示した提案は、多国籍企業に対し、進出先の国ごとに毎年、収益、法人税支払額、従業員数などを報告書にまとめ、税務当局へ提出を求めるとしています。タックスヘイブン(租税回避地)を利用した課税逃れの取り締まりが目的です。
経済協力開発機構(OECD)は多国籍企業の課税逃れ防止へ国別報告書の提出を含めた対策をまとめ、昨年10月、主要20カ国・地域(G20)が承認しました。IRSの提案はこうした動きを受けたものです。
国際援助団体「オックスファム米国」のタトゥ・イルンガ氏は、IRSの提案を「強く支持する」と発言。「国別報告書は公表されてこそ多国籍企業に対する抑止力となる」と語り、議会やメディア、市民団体、研究者などが監視でき、米国以外の国々の税務当局も情報共有できる制度までつくることが必要だと強調しました。
「金融の透明性連合」のポーター・マコネル氏も、税務当局への報告だけでは「重要な抑止効果が得られない」と指摘。欧州では域内の大企業に対して情報の一部公表を義務付ける新ルールが提案されていることなどを紹介しました。