2016年5月13日(金)
ブラジル大統領 停職
上院可決 弾劾法廷を設置
ブラジル上院(定数81)は12日午前(日本時間同日午後)、政府会計を不正操作したとの理由で、ルセフ大統領に対する弾劾裁判を行う法廷設置を賛成55、反対22で可決しました。これにより、ルセフ氏は停職。上院に設置される法廷で3分の2に当たる54人が弾劾に賛成すれば、同氏は罷免されます。(松島良尚)
景気や汚職への批判背景 ルセフ氏「クーデターだ」
上院の審議中、議会周辺には与野党の支持者が多数集結し、弾劾賛成、反対それぞれのプラカードを手にして、テレビで生中継された審議を見守りました。
裁判の期間、ルセフ氏の職務は最長180日間停止され、テメル副大統領が職務を代行します。
ルセフ氏が罷免された場合、大統領に昇格するテメル氏が2018年末までのルセフ氏の残り任期を務めることになります。
野党側は、議会の承認を得ないで政府支出の一部を政府系金融機関から借り入れたルセフ氏の行為は法律違反であり、弾劾に相当すると主張しています。
ルセフ大統領は、弾劾は正当な根拠を欠く「クーデターだ」と批判しています。
米州機構のアルマグロ事務総長は10日、歴代政権も会計操作を行っていたことなどから弾劾理由の法的根拠に疑念があると述べ、米州人権裁判所と協議する意向を示しました。
弾劾に向けた動きの背景には、会計操作とは直接関係のない景気後退や国営石油企業の汚職事件に対する国民の不満があります。これが大統領辞任を求める大きな世論となり、弾劾への流れに拍車をかけました。
弾劾裁判の行方にかかわらず、混乱は長期化するとみられます。景気後退や雇用悪化、高インフレなどの問題が解決する展望はありません。
暫定大統領に就任するテメル氏にも、ルセフ政権の会計操作に関与した疑いがかかっています。世論調査では半数以上がテメル氏の弾劾も求めています。同氏を党首とするブラジル民主運動党の政権離脱が弾劾審議の引き金となったことから、暫定政権に対するルセフ支持者の激しい反発も予想されます。
一方、ルセフ氏が罷免されなかった場合も、大統領としての権威を取り戻すのは困難とみられ、少数与党の下で政治、経済危機を乗り越えられるかどうかは不透明です。