2016年5月11日(水)
比大統領選 ドゥテルテ氏 当選
南シナ海問題は対話を主張
【マニラ=松本眞志】9日に実施されたフィリピン大統領選挙で10日、ダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)が当選しました。同氏は領有権争いが続く南シナ海問題で中国との対話を主張。ミンダナオ島でのイスラム武装組織との和平実現に向けては、高度な自治を認める連邦制国家への移行を目指すとしています。
選挙監視団によると、開票率90%の段階でドゥテルテ氏の得票率は約39%。アキノ現大統領の与党・自由党から立候補したマヌエル・ロハス前内務・自治相(58)は約23%にとどまりました。
南シナ海問題でドゥテルテ氏は、選挙中一貫して「中国との戦争は誰も望まない。対話で解決する」と訴え、領有権の主張は棚上げにした上で海底油田・ガス田の共同開発を進めるよう中国に呼び掛けてきました。
9日の記者会見では、南シナ海で領有権を主張する当事国(フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ)と米国、日本、オーストラリアによる首脳会談を提案。「多国間の対話がうまくいかなければ、フィリピンと中国が2国間で対話をする」と述べました。
イスラム武装勢力との和平では、アキノ政権が武装組織との合意に基づいて大幅な自治を認める法案を議会に提出しましたが、「国の中に別の国をつくるようなもの」と反発する議員が多く、和平の実現が行き詰まっています。
ドゥテルテ氏は選挙戦で「モロ(ミンダナオ島のイスラム教徒)が受け入れ可能な唯一の形は連邦制だ。そのための憲法改正も進める」と語り、高度な自治の実現を目指す考えを明らかにしました。
一方で、強権的手法による犯罪や腐敗・汚職の根絶を訴え、治安の悪化と公共サービスの悪さに不満を持つ富裕層や中間層から高い支持を得ました。ただ過激な発言には強い懸念が出ています。
アキノ大統領は選挙期間中、「ヒトラーがいかにして権力を奪取したのかを想起するべきだ」と語り、マルコス独裁政権を打倒した1986年の「ピープルズ・パワー」革命から専制支配に逆戻りすることに懸念を表明しました。
地元紙マニラ・ブレティンは、ドゥテルテ氏が今後取り組むべき課題として▽犯罪撲滅▽貧困改善▽新人民軍やイスラム武装組織への対応▽インフラ整備▽腐敗・汚職根絶―の五つを挙げています。大統領就任は6月30日、任期は6年。