2016年5月4日(水)
フィリピン大統領選 最終盤
外交・人権 主張に差
3候補激戦の様相
【ハノイ=松本眞志】9日の投票日を前に最終盤を迎えているフィリピン大統領選挙は、3候補による激戦の様相となっています。
今年4月中旬までの地元の世論調査で30%台でリードしてきたロドリゴ・ドゥテルテ・ダバオ市長が、過去の集団レイプ事件で被害者を冒とくする発言をおこない、隠し預金の疑惑などへの批判の高まりもあって、直近での調査で約25%に下がりました。同調査によると、アキノ大統領の支援を受けるマヌエル・ロハス前内務・自治相が約28%を得て首位に浮上。これをドゥテルテ氏とグレース・ポー上院議員が追う展開です。
ジェジョマル・ビナイ副大統領はトップ集団から遠のき、ミリアム・サンティアゴ上院議員は現在2%台で最下位です。
今年2月の選挙キャンペーン開始時に、各候補は一様に雇用や貧困問題の改善や腐敗・汚職の一掃などをかかげていました。現在は、外交・防衛問題や人権問題で、その主張に差がみられるようになりました。
今年1月に最高裁判所が合憲とした米比防衛協力強化協定(EDCA)について、ビナイ氏とドゥテルテ氏は同協定を支持する立場です。特にドゥテルテ氏は、中国との間での南シナ海の領有権問題をめぐり、米軍からの支援に大きな期待を寄せているとされています。
ロハス氏はこの問題について長期間沈黙を守ってきましたが、国内では、米国との同盟関係強化をめざしてきたアキノ大統領の路線を踏襲するとみられています。ポー氏はサンティアゴ氏とともに、上院議会での批准が必要だとする姿勢を示しています。
また人権問題に関し、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が各候補に質問書を送付しました。HRWは、フィリピン国軍による人権侵害に対する説明責任が果たされていないことや、法を無視したジャーナリストの殺害、貧民街に「不法居住」している住民の強制移住への対応など、人権問題が深刻化している実態をつきつけ、回答を求めました。
これに対し、ロハス、サンティアゴ、ポーの3氏が書面で回答。ビナイ氏とドゥテルテ氏は回答を控えています。
HRWが1日に発表した調査報告によると、大統領選挙をテーマにした討論会では、人権問題がほとんど語られなかったといいます。HRWアジア地域担当のブラド・アダム事務局長は、「人権問題はフィリピンでもっとも重要であり、政府運営の核心をなす問題だ」と語っています。