2016年4月23日(土)
主張
刑訴法の大改悪
時代に逆行する法案は廃案を
昨年の国会で継続審議になっていた刑事訴訟法等改定案の審議が、参院法務委員会で再開されています。昨年の国会審議では、「冤罪(えんざい)防止」に役立つ取り調べの録音録画はごく一部にすぎず、盗聴捜査の大幅拡大や、他人の「犯罪」を供述すれば自分の刑の減免ができる「司法取引」の導入など、冤罪を増やし国民監視を広げる悪法の実態が浮き彫りになりました。改悪案は徹底審議のうえ、廃案にすることが必要です。
冤罪さらに増える危険
日本の刑事司法は、1980年代の免田事件など死刑再審無罪事件をはじめ、最近も足利事件、布川事件など多くの冤罪を生んでいます。裁判官が、公開の法廷で被告人が犯行を否認しているのに、捜査官の面前での自白調書を重視して、有罪としているところに原因があります。検察官が被告人の無罪を証明する証拠を裁判で隠し通すこともしばしば行われてきました。法務省は、こうした冤罪事件の問題点を「網羅的に把握していない」との無責任な姿勢で、第三者委員会を設置して検証することも拒否してきました。
日本共産党は、刑事司法の抜本的改革―警察留置場での勾留の禁止、取り調べでの弁護士の立会権、取り調べの全過程の録音録画、証拠の全面開示は急務と考えます。
ところが法案は、取り調べの録音録画は殺人や放火など裁判員裁判の対象となる重大事件と検察による独自捜査事件に限り、逮捕・勾留事件全体の2%程度にすぎません。任意同行中の取り調べは録音録画の義務づけの対象にはなりません。対象事件であっても例外が広く認められるなど自白強要の捜査をただすには程遠いものです。
最近有罪判決が出された栃木県小1女児殺害事件の裁判員裁判では、証拠調べで公開されたのは、取り調べの全過程ではなく、容疑者の自白した部分の録音録画でした。そのため裁判員には、捜査側に都合のよい供述部分のみで、任意の自白なのかどうかの困難な判断を強いられました。法案のうたう「可視化」の危うい実態を浮き彫りにしています。
盗聴できる犯罪を一般犯罪に広げ、通信管理者の立会人を廃止し、警察官を立会人にする盗聴の拡大が、プライバシーや令状主義を侵害するなど憲法の人権規定をないがしろにすることは明らかです。
「司法取引」が他人の犯罪について虚偽の供述をし、無実の人を犯罪者に仕立てる可能性があることも、国会審議で明白となりました。同様の制度をもつ米国では、04年当時判明した死刑冤罪事件のうち、45・9%の冤罪原因が、情報提供者の誤った証言でした。あまりにも危険な仕組みです。
法案は、検察官が集めた証拠の全面開示に背を向け、警察留置場を代用監獄として取り調べに利用することを制限することや、取り調べに対する弁護士の立会権などは何も提起されていません。
悪政阻止の運動と結んで
日本の刑事司法が本来求められる抜本的改革に逆行した改悪案を強行することは許されません。自由法曹団、日本民主法律家協会など法律家団体や市民団体は人権侵害のおそれのある改悪案阻止へ行動を続けています。戦争法廃止のたたかいをはじめ、安倍晋三政権の暴政を許さない運動と結び改悪案を廃案に追い込みましょう。