2016年4月8日(金)
研修医48時間スト イングランド
英医療制度改革に抗議
【パリ=島崎桂】英イングランド全土で6、7の両日、英国政府が進める医療制度改革に抗議する研修医の48時間ストが行われました。同改革案をめぐるストは今回で4回目。英国医師会(BMA)に所属する研修医ら数千人が、ストと合わせて各地でデモを実施しました。
過重労働、ミス増加懸念
問題の改革案は、英政府が2012年に策定したもの。研修医の基本給を13・5%引き上げる一方で、残業代、深夜手当など諸手当の廃止・削減を盛り込むほか、従来「時間外勤務」とされていた土曜診療の「通常勤務」への切り替えを企図しています。
こうした措置により、救急患者の死亡率が比較的高い週末の診療体制を強化するとしていますが、BMAは医師の過重労働と医療ミスの増大につながると懸念。「医師と患者の双方に有害だ」として、改革案の見直しと人員・予算拡大による体制強化を求めています。
英政府とBMAはこれまで、改革内容をめぐる交渉を重ねてきましたが、今年2月に決裂。政府は8月に同案を実施すると表明しました。
保健省前や各地の病院・診療所前での抗議行動では、「医師を守れ、公的医療を守れ」「疲労は(医療)ミスの原因になる」などと書かれたプラカードが立ち並びました。
英国の研修医約5万5000人の半数以上が加盟するBMA研修医部門のヨハン・マラワナ代表は、現行案を強行すれば「政府は1世代の医師を失う恐れがある」と指摘。「公的医療と患者の未来のため、研修医への適正な投資に関わる交渉を再開し、話を聞くべきだ」と訴えました。
医療の改善を求める患者団体からも、「研修医は公的医療の屋台骨」であり、「公的医療への支出が停滞している中で、さらに医師を減らすような危険を冒すべきではない」との声が上がっています。
BMAは、政府の姿勢に変化がなければ今月26、27の両日にも改めてストを実施すると発表。今回、救急部門でのストは見送られましたが、次回のストでは救急部門も対象にするとしています。
医療団体との交渉再開を求める市民らの署名は11万人分に達していますが、ハント保健相はこれまでのところ、交渉拒否の姿勢を維持しています。