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2016年4月1日(金)

主張

甘利氏口利き疑惑

黙っていてもやり過ごせない

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 甘利明・前経済再生担当相が、千葉県内の建設会社と都市再生機構(UR)の道路建設などをめぐるトラブルを「口利き」し、自分や秘書が金品を受け取っていた問題で、1月末に閣僚を辞任してから2カ月たちます。辞任の際、甘利氏は疑惑に応えることを約束したのに、辞任後は「入院」などを理由に、一切国民の前に説明しようとしていません。甘利氏は黙っていればやがて国民も忘れ、やり過ごせるとでも考えているのか。甘利氏にかかわる疑惑は、あっせん利得処罰法に違反する重大犯罪であり、あいまいに済ますことは絶対許されないものです。

安倍首相の責任は重大

 甘利氏は安倍晋三首相とも親しく、安倍政権で経済産業相や経済財政担当相などの重要閣僚を歴任していました。「口利き」疑惑で追及を受けるようになる甘利氏を重要閣僚に起用し続けたうえ、疑惑が発覚してからももっぱら甘利氏に説明責任を押し付け、閣僚の任命権者でありながら一切疑惑解明の責任を果たさなかった、安倍首相の責任は重大です。甘利氏が閣僚を辞任した後のこの2カ月間も、安倍首相は、首相としても自民党の総裁としても、何ら責任を果たそうとはしてきませんでした。

 甘利氏が閣僚を辞任し、国民の前に姿を現さなくなってからも、週刊誌などメディアの報道や国会での野党の追及で、甘利氏の疑惑の重大性はいよいよ明らかになっています。甘利氏の地元事務所が「口利き」した建設会社とURの道路建設をめぐるトラブルでは、2億円を超す賠償金が支払われ、秘書にわたった500万円だけでなく、甘利氏が大臣室で受け取った50万円も、そこからねん出されたとみられます。その後再燃した産業廃棄物処理などをめぐるトラブルでは、甘利氏自身が地元事務所で詳しい話を聞き、新たに50万円の献金を受け取り、秘書にトラブル処理を指示して、秘書はURとの間で解決金などを釣り上げる交渉をしていた疑惑が濃厚です。

 あっせん利得処罰法は国会議員や秘書が、国や国が出資する団体の職員に請託を受けて働き掛け、影響力を行使して報酬を受け取れば、議員は3年以下、秘書は2年以下の懲役などの重罪に問われます。甘利氏が閣僚を辞任しただけで口を拭って済まそうとし、安倍首相や自民党も疑惑を不問にするなどというのは許されません。

 甘利氏らに対しては東京の弁護士グループが、あっせん利得処罰法に違反すると東京地方検察庁に告発し、東京地検特捜部が甘利氏らに資金提供していたという建設会社の元担当者から事情聴取したとも伝えられています。司法が捜査に着手するのは当然ですが、甘利氏が現職の国会議員であり最近まで重要閣僚の一人だった以上、捜査結果を待たず疑惑の全容を自ら解明するのが当然です。

TPPの審議にも関わる

 国会は2016年度予算の成立が強行された後、環太平洋連携協定(TPP)の承認案件とその関連法案の審議が焦点ですが、TPPの交渉担当者だった甘利氏には、疑惑の解明とともに交渉の説明責任が求められます。

 自らの疑惑を解明しない甘利氏が、国会や国民の前でTPPについて語れるのか。TPPの交渉経過は不明で、甘利氏が説明できないなら審議は進みません。


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