2016年3月25日(金)
パソナ「辞めさせ出向部屋」
転職活動強いる片道切符
日本共産党の小池晃議員が24日の参院厚生労働委員会で取り上げた、大企業と大手人材・派遣会社パソナグループがつくっている「辞めさせ出向部屋」。その恐るべき実態は―。(深山直人)
「出向して、転職先をみつけてほしい」
富士電機の子会社、富士電機ITソリューション社員のAさん(48)が上司から通告されたのは、2011年のことでした。
「退職勧奨だ」と思ったAさん。拒否しましたが「君の席はない」といわれ、業務命令でパソナグループの転職支援会社・日本雇用創出機構に出向させられました。
機構での仕事といえば、転職先を探して面接を受けたり、ハローワークに通うこと。「出向といっても戻れない片道切符。業務命令で拒否できない。こんなやり方は許せない」とAさんは語ります。
Aさんはその後、会社と和解し、機構に対しては損害賠償を求めて裁判で係争中です。
シャープ系列のアルバックでも2012年から、人員削減対象者となった管理職も含めて50人程度を機構に出向させました。
■過酷なノルマも
連日、求人先訪問を課して結果を報告させる過酷なノルマに、労働組合が神奈川労働委員会に訴え、あっせんを受け、ようやくAさんは元の職場に戻れました。
これまでは、労働者が退職するか、退職が決まってから人材会社に委託して再就職先を紹介するやり方が通例でした。パソナのやり方は、リストラ対象者を出向で受け入れ、自ら転職先を探させるやり方です。パソナグループ代表でもある南部靖之会長は、「失業なき転職『人材ブリッジバンク』」と誇っています。
しかし、拒否できない出向で転職活動を強いられているのが実態です。熱心にやらなければ不利益扱いされ、まじめにやればやるほど自分を退職に追い込む―「自発的意思を装って退職に追い込む巧妙な仕掛け」(戸舘圭之弁護士)と指摘されています。同機構にコメントを求めましたが、寄せられませんでした。
■安倍内閣が支援
安倍内閣は、「雇用維持型から労働移動支援型に転換」といって、こうしたリストラを支援する「労働移動支援助成金」を大幅に拡充してきました。
同助成金は、人材会社に委託した再就職支援費の半分を支給。2014年度予算では301億円を計上し、前年度予算から158倍にも増やしました。
当初は中小企業だけが対象でしたが、大企業にも支給を拡大。再就職時だけでなく委託時にも支給。人材会社などが「転職訓練」を行うだけでも支給できるようにしました。労働者を「追い出し部屋」に配転し退職強要する大企業や、会社に代わって退職強要する人材会社にも支給されるようになったのです。
Aさんはいいます。「こんなやり方を支援するなんて許せませんよ。人権無視のリストラをやめさせ、雇用を守るべきです」
◇機構の主な株主・賛助企業
旭化成、オリックス、京セラ、コスモ石油、ソニー、第一三共、キヤノン、JR西日本、ソフトバンク、ダイキン、電通、東レ、パナソニック、富士通、三菱電機、三井住友海上、リコー
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