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2016年3月22日(火)

暴行の上級生・国を提訴

元防衛大生 胸中語る

いじめ容認体質許せない

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 幹部自衛官を育成する防衛大学校(神奈川県横須賀市)は21日、卒業式を迎えました。海外で「殺し、殺される」集団的自衛権行使容認で自衛官への危険が高まるなか、今年の卒業見込みの学生の任官拒否が前年度の約2倍になるなど揺れています。そんな不安と重なるように学内で日常化するいじめと暴行。これを容認する学校で被害にあった元男子学生(福岡県在住の20代)が国と上級生を訴えました。原告の元学生が本紙の取材に応じ、胸中を語りました。(山本眞直)


 元男子学生は18日、「うつ症状」で退学に追い込まれたのは「国の安全配慮義務違反」として、上級生と国を相手に、3690万円の損害賠償を求めて福岡地裁に提訴しました。

 元男子学生は2013年4月に入学し、学生寮に入寮。しかし同年6月から14年5月にかけて上級生らから受けたのは「指導」と称して殴る、蹴るなどの暴行と、ロッカーにある私物を荒らされるなどのいじめの繰り返しでした。

「いじめ辛抱しろ」

 「指導」は上級生らの気分しだいで繰り返されるといいます。元男子学生が、なかでも耐えられなかったことは、放課後に上級生から「風俗店にいき、写真をとってこい」という「指導」でした。

 元男子学生が「行けない」と拒むと、「罰」がまっています。仰向けに寝かされ、上級生らが上から足で思い切り踏みつけてきます。

 こうした暴行には「ネーミング」があります。例えば「○○ファイヤー」。下半身にアルコールをふりかけ、それに火をつけるという蛮行です。

 熱さと痛みに耐えられず消そうとすると「まだ我慢しろ」と上級生の罵声が襲ったといいます。

 理不尽ないじめと暴行に、思い悩んだ末に学校のカウンセラーに相談しましたが、返ってきたのは「1カ月我慢すればなくなる、辛抱しろ」という言葉でした。

 元男子学生は、振り返ります。「あのときはもうだめだ、と思った。最後の頼みの綱が切られた」。心身ともに絶望のふちに立たされ、「重度ストレス反応」と診断されました。14年8月、家族とも相談し休学しました。あわせて上級生ら8人を横浜地検に刑事告訴しました。同地検は15年3月、上級生3人を暴行罪で「略式起訴」し、残りの5人は起訴猶予にしました。横浜簡易裁判所は3人に罰金を命じました。

 元男子学生は、防衛大を昨年3月に退学しました。被害体験から自衛隊への見方、考え方も大きく変化したといいます。

 「実家の福岡が水害にあったときに、自衛隊が住民の救援のために働く姿をみて共感、自分も自衛官になると考えた。高校卒業で国立大学も合格していたが防衛大学校を選んだ。しかし入学して厳しい上下関係を利用した陰湿ないじめ、暴行の限りを尽くす上級生。これを容認する学校側の体質は許せなかった」

決別決めた戦争法

 自衛隊との決別を決断させたもう一つが戦争法でした。

 「自衛官への道を選んだ最大の理由、それは国を守ることです。しかし安倍政権が強行した戦争法(安保関連法)は見ず知らずの海外の戦場で命を捨てろ、という。自分たちはそんな誓約をしていない。それなら自衛隊(防衛大学校)に入らなかった。突然、集団的自衛権を持ち出したのは契約違反だ。そう考えて反発する同期生は少なくない。今は別の大学で法律を学んでいる。自衛官と国民の人権を守るために役立ちたい」


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