2016年3月22日(火)
中国全人代 経済改革・脱貧困へ決意
企業淘汰と再就職支援で安定めざす
5〜16日に北京で開かれた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、2016〜20年の「13次5カ年計画」を正式決定し、経済改革や脱貧困などを強調しました。経済発展と国民の生活の向上は、中国共産党にとって政権を担う正当性に直結する問題です。中国政府・党は、社会不安にもつながりかねないこの難題に取り組む強い決意を示しました。(北京=小林拓也)
中国は、投資・輸出主導の経済から内需主導型経済への転換を進めています。新5カ年計画で強調されたのは、企業など「供給側の構造的改革」と、新技術・新産業の育成です。
失業者500万人
李克強首相は、鉄鋼や石炭などの分野での過剰生産能力を解消するため、経営困難な「ゾンビ企業」を淘汰(とうた)する方針を示しました。ただ、この2分野だけで失業者は180万人に達し、他業種も含めれば500万人以上に上る見込み。李首相は1000億元(約1・7兆円)以上の中央財政を支出し、再就職支援などに充てると述べました。
李首相は16日の記者会見で、「改革開放を堅持すれば、中国経済がハードランディング(急な失速)することはない」「困難と希望が併存しているが、希望の方が困難よりも大きい」と述べ、自信を見せました。
全人代期間中の11、12日、黒竜江省の双鴨市で、給与未払いに抗議し、炭鉱の労働者や家族ら数千人による大規模なデモが発生。全人代で同省の陸昊(りくこう)省長が「賃金の未払いはない」と発言したことへの反発でした。
インターネット上には、労働者らが「共産党はわれわれの金を返せ」「陸昊はうそをついている」などと書かれた横断幕を掲げた画像が次々と掲載されました。陸省長はすぐに誤りを認め、未払い給与の解決を表明。人民の不満が高まり、わずかなきっかけで、地方政府トップへの抗議につながることが浮き彫りになりました。
「至上命令だ」
5年後の「全面的な小康(ややゆとりある)社会の建設」の要である貧困層対策では、農村での産業育成や移住促進で、5500万人以上いるとする貧困人口をゼロにする目標を提示。今年は1000万人以上の脱貧困を目指します。李首相は「脱貧困は至上命令だ」とげきを飛ばしました。ただ、これだけ大規模な貧困脱却には困難も指摘されます。
中国政治に詳しいある北京大学准教授はこう強調します。「経済発展と民生の改善は、政権の安定、党の正当性の基礎だ。とくに経済発展はすべての前提であり、ここに失敗したら、社会は不安定になり、各地で抗議行動が起こり、党への批判が高まりかねない。政府・党が抱えるプレッシャーは大きい」