2016年3月21日(月)
米軍 比に大規模展開へ
事実上の常駐復活
共同声明で確認 TPP参加後押し
米国とフィリピンが昨年合意した米比防衛協力強化協定(EDCA)が近く履行され、米軍がフィリピン各地に大規模展開する見通しとなりました。両国は18日に発表した第6回戦略対話の共同声明で、五つの比軍基地の利用を確認。さらに同声明は、米国がフィリピンの環太平洋連携協定(TPP)参加を後押しすることも表明しました。(面川誠)
かつてフィリピンに常駐していた米軍は、基地協定の失効で1992年までに撤退しました。EDCAは米軍基地の復活ではありませんが、比軍基地内で米軍が施設を建設・運用できるため、事実上の常駐復活となります。
ロイター通信によると、米国のゴールドバーグ駐比大使は18日、米軍が大規模展開を開始する時期は「非常に近い」と言明。「海洋安保という21世紀の課題」が展開の目的だと語りました。
18日の共同声明は中国を念頭に、「南シナ海で進行中の軍事化に強い反対」を表明。「さらなる軍事化と一方的行動に対応する選択肢を協議した」としていますが、具体的な「選択肢」は明らかにしませんでした。
米比両軍は4月4日から15日まで、年次合同軍事演習「バリカタン」を実施します。また、カーター米国防長官がEDCA履行を協議するために、4月中にフィリピンを訪問する予定。フィリピン各紙は、バリカタンが米軍大規模展開の開始になると報じています。
TPPについては、昨年11月の米比首脳会談後の共同記者会見でオバマ米大統領が「(アジア・太平洋)地域における米国のリバランス(再均衡)政策の柱だ」と指摘。「フィリピンのTPPへの関心を歓迎する」と述べました。
在米フィリピン大使館の発表によれば、3月16日の米比貿易投資協議(通商次官級)で「米通商代表部が広範で重要な説明」を行い、「TPPの効果について今後も協議を行うことで合意した」といいます。
17日には在フィリピン米商工会議所が、米政府機関の国際開発局(USAID)の協力を得て作成した報告書「フィリピンとTPP」を公表。報告書は「(フィリピンの)TPP参加にとって最大の障害は、フィリピンでの企業活動で外資の所有権と参入を制限している憲法の規定だ」と指摘し、改憲を公然と要求しました。
フィリピン・スター紙(電子版)は17日、「フィリピン政府は、TPP参加が公共の福祉に何をもたらすのか慎重に考慮すべきだ」と求めました。