2016年3月13日(日)
アジア政党国際会議・ワークショップ
緒方副委員長の発言
要旨
12日、イスラマバードで開かれたアジア政党国際会議主催のワークショップで日本共産党の緒方靖夫副委員長・国際委員会責任者が行った発言(要旨)は次の通りです。
日本は、日本人・外国人の性的搾取、強制労働が横行し、人身取引被害が最も深刻な先進国の一つだ。国際社会から「人身取引根絶の最低基準を満たさない国」と厳しく批判されている。しかし国内では十分な世論喚起がなされず、“隠された社会問題”となっている。
【性的搾取】第1は性の商品化を舞台とした性的搾取の被害だ。日本には営業登録数で3万を超える性風俗業、400億円規模のポルノ産業の存在と児童ポルノの洪水があり、組織犯罪等とあいまって、性的搾取の土壌となっている。
レイプ被害者が個人情報を押さえられ、売春を強制された、スカウトにだまされ、ポルノビデオへの出演を強制されたなどの被害をNGOとメディアは告発している。出稼ぎにきた外国人女性が、来日後「借金」があると脅され、性産業での従事を強制される。
性的搾取の被害者は推計5万4000人以上(NPO法人「ライトハウス」)いる。しかし、人身売買罪は人の「売買」だけを禁じており、「人身取引」では訴追されない。警察による人身取引の摘発は昨年44件だけだった。
【「慰安婦」問題】今日の人身取引問題は、日本軍「慰安婦」問題への政府の態度と無関係ではない。軍、国家権力による女性の搾取と尊厳の否定が、組織的かつ体系的に行われたことが問題の本質だ。「慰安婦」たちは意思に反して連行され、監禁、拘束、強制使役という性隷属状態に置かれた。
昨年末、「日韓政府合意」があり、両国関係は改善されたが、すべての元「慰安婦」の名誉と尊厳の回復には至っていない。日本政府は国連の場で、「軍や官憲によるいわゆる強制連行を確認できなかった」と「河野談話」の核心部分を事実上否定した。「最終的」という「合意」に反して、日本側から蒸し返した。
国連の女性差別撤廃委員会は7日、日本政府に対し、「被害者の権利を認識し、完全で効果的な癒やしと償いを提供する」ことを勧告した。日本政府が、歴史的事実に向き合い、謝罪、賠償することが求められている未解決の問題だ。
【労働搾取】日本政府の「技能実習制度」は、日本で強制労働を生んできた。東アジア諸国などからの外国人「技能実習生」は約17万人(2014年)おり、工場や農場などでの「実習」中、最低賃金をはるかに下回る低賃金での長時間労働など強制労働の条件で働かされてきた。社内強制貯金、パスポートとりあげ、実習生の立場の弱さに乗じたセクハラや暴力も起きている。
【対策】人身取引はグローバルな問題であり、国際協力が不可欠だ。労働者の状況を共有するなど、送り出し国と受け入れ国間の協力が重要だ。
同時に人身取引の“受け入れ大国”で、搾取や人権侵害を止めることが喫緊の課題だ。人身取引根絶のためには、法による摘発、悪質な産業の規制から、経済格差の縮小、人権意識の向上など包括的な行動が必要だ。
日本人の81・3%が「日本人が国内で人身取引の被害者となっている」ことを知らないとの調査がある。人々の問題意識を劇的に向上させ、包括的な行動への国民参加を拡大する必要があると強調したい。
けん引役となってきたNGO・市民社会と、政党との協力は不可欠だ。人間の尊厳を守るために全力をあげる。