2016年3月8日(火)
「史上最大」米韓演習始まる
北朝鮮 「総攻勢に入る」と反発
米韓両国軍は7日、北朝鮮による軍事行動への対応を想定した「史上最大規模」(韓国国防省)の合同軍事演習を開始しました。これに対して北朝鮮の最高指導部にあたる国防委員会は同日、「総攻勢に入る」との声明を発表。韓国の一部メディアからは、双方の軍事的対応が「情勢悪化の要因になる」と懸念する声が出ています。(面川誠)
「情勢悪化」懸念も
4月30日までの演習には米軍約1万7000人と韓国軍約30万人が参加し、米軍は原子力空母「ジョン・C・ステニス」、核搭載可能なステルス戦略爆撃機B2などを派遣。指揮系統を確認する図上訓練「キー・リゾルブ」と、両国軍の海兵隊による野外実戦訓練「フォール・イーグル」が行われ、北朝鮮の核・ミサイル施設の占領を目的とする上陸訓練「双竜訓練」も予定されています。
北朝鮮が強く反発しているのは、米韓両国軍が昨年署名した作戦計画「5015」が今回の演習に反映されていることです。韓国メディアによると同計画は、北朝鮮が核・ミサイル、化学兵器を発射する兆候を確認した場合、発射前に発射台を「ピンポイント」で攻撃・破壊する内容。さらに、発射命令の権限を握る北朝鮮最高指導者を「除去」する「斬首作戦」も含まれるといいます。
北朝鮮国防委員会が発表した声明は、米韓合同演習への対応措置が「より先制的で、より攻撃的な核打撃戦」になるとして、「総攻勢に入る」と表明しました。
声明は「核先制打撃戦」が先月23日に朝鮮人民軍最高司令部が発表した「重大声明で指摘した順序の通りに実行される」としています。「重大声明」は、「いわゆる『斬首作戦』と『ピンポイント攻撃』に投入される敵の特殊作戦武力と作戦装備がささいな動きでも見せる場合」に、「先制的な作戦遂行に入る」と述べています。
米韓、北朝鮮双方の「作戦」はいずれも、相手側からの攻撃の動きを前提にしていますが、その内容は先制攻撃の色合いを強く帯びています。
こうした状況について、韓国日刊紙・韓国日報は7日付の社説で、米韓による地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備計画も含めて「韓(朝鮮)半島の情勢を悪化させる要因として作用する恐れが大きい」と指摘。「南北いずれも危機管理が全く作動していない」と強い懸念を表明しました。
ハンギョレ紙の同日付社説も「朝鮮半島に関連する事案について軍事力強化で対応しようとする軍事主義的思考が最近強まっていることは憂慮すべき流れだ」と批判しました。