2016年2月29日(月)
イラン選挙 穏健・改革派が躍進
大統領「国民が政府を信頼」
【テヘラン=小玉純一】イランで26日に投票された専門家会議(定数88)と国会議員(定数290)選挙の開票が進んでいます。当地の報道によると、選挙前は少数派だったロウハニ大統領を支持する穏健派と改革派が躍進。内務省による28日の中間発表によれば、首都テヘラン選出の国会議員30人は、すべて改革派が当選する見通しです。
イラン国営通信によると、ロウハニ大統領は27日、「競争は終わった。国内の能力と国際的な機会を生かして、イラン経済発展の新たな章を切り開くときだ」と表明。「国民は再び力強さを見せた。自ら選んだ政府に、いっそうの信頼を寄せ、力を与えてくれた」と語りました。
ロウハニ大統領は核開発制限による制裁解除を生かして、外国との関係を拡大して経済を立て直す意向。開票の傾向は、これに対する国民の支持と期待の表明です。
国会議員の当選者は、保守強硬派106、改革派79、無所属系44が判明。無所属系の多くが国会で改革派と協力するとの見方が有力です。いくつかの選挙区では25%を超える得票者がなく、4月下旬の決選投票に持ち越されます。
国政全般の決定権を持つ最高指導者を選ぶ専門家会議の開票では、ロウハニ大統領とラフサンジャニ元大統領を含むグループの候補が、テヘランの選挙区で定数16のうち13を獲得したとの報道が流れました。
有権者5500万人のうち約3300万人が投票し、投票率は約60%です。
解説
最高指導者選出にも影響
今回選ぶ専門家会議は、76歳と高齢のハメネイ師の後継を決める可能性があります。同師は、最高指導者ホメイニ師が死去した1989年当時の大統領でした。
専門家会議で穏健・改革派が影響力を強めれば、ロウハニ大統領が後継となる可能性もあります。穏健派が最高指導者になれば、イランの進路に大きな影響を与えます。
2013年の選挙で当選したロウハニ大統領が来年の選挙で2期目に挑むのは確実視されています。国会で大統領支持派が躍進したことで、大統領の再選に弾みが付いたといえます。
ただ、保守強硬派も護憲評議会などの権限を使って巻き返しを図るとみられます。
1997年の選挙で改革派ハタミ大統領が誕生し、2000年の国会選挙で穏健・改革派が多数になりました。しかし、2004年国会選挙では改革派が立候補を制限され封じ込められ、2005年の大統領選挙で強硬派アハマディネジャド氏が当選し、核開発を進めました。
こうした政治情勢の変化には、米国の影響もあります。改革派ハタミ大統領時代、イランを「悪の枢軸」としたブッシュ大統領の姿勢が、イランの強硬派を勢いづかせました。
現在、オバマ大統領とロウハニ大統領が核合意では協力する姿勢を見せています。米国の次期大統領がイランにどう向き合うかは、イランの今後にも大きな意味を持ちます。
(テヘラン=小玉純一)