2016年2月24日(水)
シリア 米ロが停戦共同声明
戦闘勢力に呼び掛け
対IS掃討作戦は継続
【ワシントン=島田峰隆】米国とロシアの両政府は22日、シリアのアサド政権と反政府勢力に対し、27日午前0時(日本時間同日午前7時)から停戦に入ることを呼び掛ける共同声明を発表しました。ホワイトハウスによるとオバマ米大統領がロシアのプーチン大統領と電話会談し、すべての当事者が停戦を実施することが重要だと強調しました。
共同声明は、シリアで戦闘に関わっている当事者に対し、26日正午(日本時間同午後7時)までに停戦受け入れを米国かロシアに通告するよう求めました。ただ停戦対象には過激組織ISや国際テロ組織アルカイダ系のヌスラ戦線は含まれていません。
共同声明はアサド政権と反政府勢力に対し、▽政治解決を目指す国連安保理決議を全面履行する▽いかなる武器を用いた攻撃も停止する▽停戦に応じた勢力の領土を制圧しない▽人道支援活動を受け入れる―ことなどを求めました。
一方、共同声明は、シリア政府軍やロシア軍、米国主導の有志連合による空爆を含む軍事行動は継続すると明記しています。
解説
停止は未知数 事態が動く兆しも
米ロ両国のシリア「停戦合意」で、実際戦闘停止がどの程度広がるかは未知数です。シリア反体制派の連合体「高等交渉委員会」は22日、リヤドで米ロの停戦案を検討し、「国際的保障に基づき」一時的停戦で暫定合意したと発表するなど、事態が動く兆しもあります。
合意はまた、国連安保理決議で壊滅の対象となっている過激組織IS、国際テロ組織アルカイダ系のヌスラ戦線などへの「軍事攻撃は継続する」としています。またこれら組織の支配地域の線引きを行うとしています。
これまで、外国の支援を受けたシリアの反体制勢力は、現場の軍事バランスに応じて、ヌスラ戦線やISの傘下に入るなど流動的でした。シリアやロシアは、武装した反政府派はすべてテロリストだとして攻撃対象とし、反政府派やその支援国はこれに反発してきました。地理的な線引きは、この対立を乗り越える新たな模索ともいえます。
東京外語大学の青山弘之教授は、週刊誌『エコノミスト』2月16日号で、シリア紛争は、欧米諸国の政策が「『民主化』から『テロとのたたかい』へパラダイム転換したことにより、『終わりの始まり』に入った」と指摘。「シリア政府は最近…各地で武装集団と局地的な停戦合意を結び、主導的に秩序回復を進めている」とも述べています。
米ロの合意は、こういった文脈の中で、米ロの主導的役割をアピールする意味もあります。
(伊藤寿庸)