2016年1月17日(日)
暴力的過激主義 国連あげ対応を
潘事務総長が行動計画提示
「テロ助長する原因に対処」
【ワシントン=島田峰隆】国連の潘基文(パンギムン)事務総長は15日、世界各地でテロを広げている暴力的な過激主義の予防を目指す行動計画を国連総会に提示しました。計画は、70項目以上にわたる国家、地域、国際社会の「協調した行動」を勧告しました。
潘氏は演説の中で「暴力的過激主義は国連憲章への直接の攻撃だ」と述べ、過激組織ISやボコ・ハラムなどの「野蛮な犯罪」を非難。同時にその脅威は「どの一つの宗教、国籍、民族にも限定されていない」として国連を挙げた対応を呼び掛けました。
同時に「目先のことしか考えない政策、安全保障上の措置だけを考え、人権を無視することが、状況を悪化させてきた」と述べ、「人々を対立させ、すでに差別された人々をさらに疎外し、敵の狙いにはまるような思慮のない政策でテロに対応すれば、われわれはみな敗北する」と警告しました。
今回の行動計画は、国連総会が2006年に採択した「国連全地球的対テロリズム戦略」の10年間の実践を踏まえたものです。この間「テロの予防とたたかい」が強調される一方で、「テロを生む条件への対処」や「人権の尊重と法の支配」が見落とされてきた点を反省。「安全保障上の対テロ措置だけでなく、暴力的過激主義を助長する原因に直接対処する」ための予防策だとしています。
行動計画は、過激主義の背景として▽社会的、経済的機会の欠如▽疎外と差別▽人権や法の支配の侵害▽長引く紛争▽拘束者への過酷な扱い―があると指摘しました。
そのうえで過激主義の防止に、若者や宗教者、民間組織、メディアなど多様な主体を関わらせることが大切だとを強調。外国人戦闘員の渡航を防ぐための法整備、地域協力による武器密輸の監視、持続可能な開発、各国での差別的な法律の廃止、治安部隊への人権教育、不寛容を許さない教育などを勧告しています。
「軍事行動が必要になる状況」に関しては、「いかなる対応も、国際法、特に国連憲章、国際人権法、難民法、人道法に全面的に従うよう」呼び掛けました。