2016年1月14日(木)
杭打ち不正 3社を行政処分
元請け三井住友建設など 違法丸投げ“是正怠る”
8社に再発防止勧告
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杭(くい)打ちデータ偽装問題で、国土交通省は13日、傾斜した横浜市のマンションを施工した元請けの三井住友建設(東京)と1次下請けの日立ハイテクノロジーズ(同)、2次下請けの旭化成建材(同)の計3社を建設業法に基づき処分しました。
三井住友建設には業務改善命令を出し、内規に基づき国交省発注工事の指名停止1カ月としました。日立ハイテクノロジーズと旭化成建材は業務改善命令と15日間の営業停止としました。
国交省によると、下請け2社は専任の現場責任者を置かず、建設業法が禁じる「工事の丸投げ」を行いました。三井住友建設は事情を知りながら指導を怠っていました。
国交省の石川雄一関東地方整備局長が13日午後、3社の社長らに処分書などを手渡しました。
マンションの傾斜は2014年11月に見つかりました。杭打ちは05年12月〜06年2月に行われ、旭化成建材の現場担当者が810本中70本で施工データを改ざんしていました。うち8本で支持層(固い地盤)への未達が6本、根入れ不足が2本見つかり、傾斜の原因とみられ、三井住友建設などが詳細な調査を行うかどうか、住民側と調整しています。
横浜市のマンションは一連のデータ偽装問題発覚のきっかけになりました。国交省は13日、偽装に関与したくい打ち業界の他8社に対し、再発防止を勧告しました。
解説
背景に下請け重層構造
「工事施工全体に一義的な責任を負う立場にも関(かかわ)らず(中略)その責任を十分に果たしていなかった」―。昨年末に出た、国土交通省の有識者対策委員会の「中間報告書」は、元請け三井住友建設を批判しました。
今回の行政処分は、杭工事1次下請け日立テクノロジーズが施工計画書の作成や工程管理などを、2次下請けの旭化成建材に建設業法に違反する「丸投げ」をしていたことが対象です。
また、建設業法は、2500万円以上の請負建設工事では「専任」の主任技術者の配置を義務づけています。しかし、日立ハイテクノロジーズの主任技術者は他に四つの工事を兼任し、さらに社内業務等にも従事。旭化成建材の主任技術者も二つの工事を兼任し、現場に来所したのは施工期間(約3カ月)のうち計12日程度でした。
施工に当たる下請けを監督して工事全体の施工監理を行う三井住友建設は、2社の主任技術者が「非専任」であることを認識。施工期間の間に2社の主任技術者が、ほとんど現場に来ていないことを認識していながら是正指導しなかった責任が問われています。
元請け三井住友建設の責任は極めて重いといえます。同社は旭化成建材に対して「信頼していたが裏切られた」と強調していますが、元請けとして全容解明へ国民への説明責任をきちんと果たすべきです。
問題の背景にあるのは「重層的な下請け構造」です。それは施工監理の責任をあいまいにしがちです。石井啓一国交相も「いきすぎた重層下請けに弊害があることは承知している」と答弁しています。業界全体にまん延しており、日本建設業連合会も「2次下請けまで」の簡素化をめざしています。日本共産党は「丸投げ」の禁止、不当な買いたたき、低価格発注をやめさせることなどを提案してきました。
(遠藤寿人)
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