2016年1月12日(火)
北朝鮮の核実験 6カ国協議による外交的解決こそ
北朝鮮が6日強行した4回目の核実験について、日本共産党は「北朝鮮の核開発の放棄を求めた累次の国連安保理決議、6カ国協議の共同声明、日朝平壌宣言に違反する暴挙」(志位委員長の談話)と厳しく糾弾しました。
さらに、地域と世界の平和と安定への脅威である北朝鮮の核開発問題の解決のために、国際社会が一致して政治的外交的努力を強め、北朝鮮に核兵器を放棄させるための実効ある措置を取るよう呼びかけました。
国際社会は国連安保理での協議をはじめ、関係各国が協議を進めており、問題解決のための努力が強められています。
北朝鮮を対話のテーブルに戻すために
6カ国協議を構成する日、米、韓、中、ロの5カ国は核実験の強行を受け、11日までに電話協議などを行い、6カ国協議を再開し、北朝鮮の核放棄を追求し、問題解決を図る点で一致しています。
6カ国協議は2008年以来中断していますが、米国のケリー国務長官は6日の声明で、「国連安保理や6カ国協議において引き続きパートナー諸国と緊密に協力していく」と明言。日中韓3カ国は「意味ある6カ国協議の早期再開」(昨年11月の首脳会議の共同声明)をめざすとの合意をしていましたが、改めてその立場をそれぞれ再確認しています。ロシア外務省も6日、「6カ国協議プロセスの枠内での外交的解決」を求めました。
国連安保理は新たな決議を協議中ですが、北朝鮮の核、ミサイル開発を止めるための経済制裁とその実行の強化をどう盛り込むかが焦点となるとみられます。制裁の履行状況を点検している国連の専門家パネルは、2015年2月の報告でも、決議が各国によって十分に履行されていない問題点を指摘しており、制裁の実効性が課題となっていました。
その際、重要なことは、制裁のための制裁となってはならず、あくまで、北朝鮮を対話のテーブルに戻すという目的を明確にすることです。
北朝鮮にも利益となる協議再開
一方、北朝鮮は1953年に調印された朝鮮戦争の停戦協定を「平和協定」に替えることを米国に提案し、そのための協議を呼びかけています。米国は、北朝鮮が非核化の誓約を示して6カ国協議に復帰することが必要として、米朝協議には応じてきませんでしたが、北朝鮮は米側のその態度も「敵視政策」の表れだとしてきました。
北朝鮮は、6カ国協議の再開について、核保有国としての認知が前提であることを示唆していますが、それは、北朝鮮の非核化という6カ国協議の大前提と合意に根本から反するものです。
6カ国協議の合意には、北朝鮮の非核化だけではなく、それとともに米朝、日朝の関係正常化、経済協力なども展望しており、それは北朝鮮の求めるものと重なります。
核を保有し続け国際的な孤立の道を歩むのか、核兵器を放棄して国際社会の責任ある一員としてより豊かな国づくりに進むのか、どちらが北朝鮮の将来にとっていいのか、北朝鮮が考えるプロセスが必要です。いま求められることは、国際社会が一致結束して北朝鮮に対話の場に戻るよう説得することです。
米国も“軍事的な解決ない”
「誰もが認識しているのは、朝鮮半島でのあからさまな衝突には進みたくないということだ」―米国務省のカービー報道官は7日の記者会見で、北朝鮮の核実験に関する国連と米国の対応を問われ、こう述べました。
ホワイトハウスのアーネスト報道官も6日の会見で、「軍事的選択肢もあるのか」と問われ、「われわれが現時点で望むのは、北朝鮮がミサイルや核実験をやめ、非核化を誓約することだ」と強調し、軍事的選択肢には触れませんでした。
米国は1994年に北朝鮮の核開発をめぐり、北朝鮮の核施設への空爆を検討したことがあります。しかし、朝鮮半島は、人口、産業が集中する地域であり、ひとたび戦争になれば、半島全体で壊滅的な被害が出るだけでなく、近隣諸国にそれが及ぶことが確実です。空爆と戦争の危機は、韓国の金泳三大統領の猛反対と、カーター元米大統領の訪朝により、瀬戸際で回避されました。
米国はその後、99年に対北朝鮮政策の見直し(「ペリー報告」)を行い、北朝鮮の核、ミサイル開発を、外交交渉という人的、軍事的被害を伴わない方法で解決することを優先する立場を打ち出しました。それが2003年からの6カ国協議の開始にもつながっています。
この間、米政権は民主、共和と交替してきましたが、北朝鮮問題については、軍事的解決ではなく、外交的解決で臨むという点では一貫しているのです。
戦争法では軍事対軍事の悪循環
今回の北朝鮮の核実験をうけ日本では一部に、国民の不安と怒りに便乗し、「やはり安保法制(=戦争法)は必要」との論調があります。しかし、すでにみてきたように、北朝鮮問題は、非軍事的に対応し解決することが国際社会の最大の関心事です。戦争法の出る幕はありません。
軍事に対して軍事で対応―これが戦争法です。北朝鮮の核実験で日本が軍事で対応するという選択肢は、国際社会の現状からみても考えられません。逆に、それは、国際社会から危険とみなされ、日本を孤立化させることになるでしょう。
「核抑止力」論から脱却を
北朝鮮は今回の核実験について、米国の敵視政策に対する「自衛措置」、いわゆる「核抑止力」論で正当化を図っています。昨年10月の国連総会では、北朝鮮の代表が、他の核保有国が過去に核実験を繰り返してきたこともあげながら、“われわれが実験して何が悪い”と居直った演説までしています。
しかし、国際社会では今、核兵器がもたらす非人道的な結果にあらためて注目し、「いかなる状況下でも核兵器の使用は許されない」として、その廃絶を求める声が高まっています。今年2月からは、核兵器禁止条約を課題にした国連の作業部会が議論を開始し、秋の国連総会に勧告意見を出すことをめざしています。北朝鮮の言い分は、こうした世界の圧倒的多数の流れに逆行するものです。
日本政府は、米国の「核の傘」=核抑止力を肯定し、その下に入るとしています。これは核兵器使用の惨劇を知る唯一の被爆国としてとってはならない立場です。日本は、今年から国連安保理の非常任理事国として、核兵器廃絶のために被爆国にふさわしい役割を果たすべきです。
6カ国協議の共同声明
(2005年9月19日、要旨)
・協議の目標は、平和的方法による朝鮮半島の検証可能な非核化と確認
・北朝鮮は、すべての核兵器と核計画の放棄、核不拡散条約(NPT)、国際原子力機関(IAEA)の保障措置への早期復帰を約束
・米国は、北朝鮮を攻撃または侵略をする意図がないことを確認
・米国、日本は、北朝鮮と国交を正常化するための措置を取る
・6カ国は、朝鮮半島の恒久的な平和体制について協議し、北東アジアの安全保障面の協力促進を探究することに合意