2016年1月8日(金)
1週間余に迫る 台湾総統選
野党候補リード変わらず
立法院選では第3勢力に勢い
台湾総統選挙(16日投開票)まで1週間あまりとなりました。世論調査では、最大野党・民進党の蔡英文主席(59)の支持率が45%前後と、与党・国民党の朱立倫主席(54)、野党・親民党の宋楚瑜主席(73)の2氏を抑えて圧倒的優位となっています。同日投票の立法院委員選(定数113)でも民進党が過半数を占める勢いです。 (台北=小林拓也 写真も)
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2期8年間で中台関係を大きく発展させた国民党の馬英九政権ですが、経済などの内政面に批判が集中。当初掲げていた、年平均経済成長率を6%、失業率を3%以下、16年の平均所得を3万米ドル(約363万円)にする「633」政策は全て達成できませんでした。
馬政権への不満
独立志向系シンクタンク「新台湾国策智庫」の李明峻主任研究員によると、中台関係発展で利益を受けたのは一部の大企業だけで、労働者や農民らに恩恵が及ばず。貧富の格差が広がり、労働者の平均給与は20年前と同水準で停滞。庶民の生活は苦しく、学生や若者は将来への希望がない状況です。
馬政権への不満が爆発し、14年3月に中台「サービス貿易協定」に反対する学生らが立法院議場を占拠した「ヒマワリ学生運動」が発生。李氏は「中国一辺倒政策を取った国民党の下、社会の富の再分配は最悪の状況。学生や市民は国民党を倒すという意思表示をした」と解説します。
経済の転換訴え
昨年12月27日の討論会で、民進党の蔡主席は、馬政権で台湾経済が崩壊したと非難。内需の促進や循環型経済への転換などを訴えました。国民党の朱主席は、馬政権に不十分な点があったと認めて謝罪。最低賃金の引き上げや富裕層への課税強化などの改革案を示しました。
独立志向が強いとされる民進党が政権を獲得した場合、中台関係が悪化するのではとの懸念があります。選挙の中で民進党は、中国大陸側と「意思疎通し、挑発せず、予想外のことをしない」ことを打ち出し、懸念の払拭に努めています。ただ、中台が「一つの中国」を認め合った「1992年コンセンサス」の存在を明確には認めず。中国大陸側は「92年コンセンサス」が対話の前提だとしており、懸念は残っています。
新党が第3党に
5日に告示された立法院委員選では、「ヒマワリ学生運動」に参加した学生や市民らが結成した新党の「時代力量」と社会民主党が注目されています。とくに時代力量は、民間団体「両岸政策協会」が5日に発表した世論調査で、政党支持率が10・8%と第3党に。民進党と選挙区で候補者調整もしており、躍進の可能性もあります。
これらの政党は、国民党と民進党の2大政党に対し、「第3勢力」と呼ばれています。ある台湾紙の記者は「第3勢力が学生や市民の支持を獲得している。台湾の2大政党の流れに変化が起こる選挙になる可能性がある」と指摘します。
台湾立法院委員選挙 台湾総統選と同日投票で、113の定数を小選挙区比例代表制で争います。小選挙区は73議席、比例代表は34議席、先住民枠が6議席。得票率5%を超えた政党にのみ比例代表の議席が与えられます。比例名簿の過半数を女性候補にする必要があります。総統選、立法院委員選ともに有権者は20歳以上。p>