2016年1月3日(日)
EUめぐり揺れる英国
残留か離脱か 国民投票 6月が有力視
スコットランド自治政府は残留を要求
【パリ=島崎桂】英国で今年、欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の実施が見込まれています。EU各国は英国の離脱を阻止するため、英国が提案したEU改革案を協議中。2月のEU首脳会議で合意を得る見通しですが、内容次第では英国で高まる反EU感情を抑えきれず、EUで初となる加盟国の離脱が現実となる可能性もあります。
英国では近年、雇用情勢や財政への影響を理由に、国民の対EU・移民感情が悪化。EU離脱と移民規制を掲げる英独立党(UKIP)が急速に支持を集め、与党・保守党内からもEU離脱を望む声が高まっています。
こうした声に押されて国民投票の実施を決めたキャメロン首相ですが、EU改革での合意を条件に、EU残留を求める立場を明確にしています。先月のEU首脳会議では、英国の経済、国防にとってEUは不可欠だと強調。「最良の未来は改革後のEU内にある」と訴えました。
協議は難航
ただ、キャメロン氏が提示した改革案の協議は難航しており、英国が納得する形での合意が得られるかは不透明です。
キャメロン氏は11月、EU残留の条件として、▽他のEU諸国からも含め移民の福祉利用の制限▽EU域内の移動の自由の見直し▽リスボン条約(EUの憲法に相当)が規定する「統合の深化」規定の適用除外―などを提案。これに対して他のEU諸国は「EU市民の間に差別を持ち込む」と懸念を示しています。
メルケル独首相は先月、EU改革への前向きな姿勢を示す一方、「移動の自由と差別の禁止というEUの核となる原則は保持することが前提だ」と指摘。オランド仏大統領も、「(EUの)規則と合意は尊重すべきだ」とくぎを刺しました。
英国のEU離脱は、国内にも大きな影響を与えるとみられます。とりわけ、2014年に英国からの独立を問う住民投票を実施した北部のスコットランドは、EU残留を強く要望。EU離脱の決定はスコットランド独立の新たな引き金となりかねません。
スコットランド自治政府のスタージョン首相は昨年10月、与党・スコットランド民族党(SNP)の党大会で、EU離脱が決まった場合、英国からの独立を問う新たな住民投票を提起すると表明。年末の現地メディアへの寄稿で、「スコットランドがその意思に反してEUから引き離されることを深く懸念している」と述べました。
賛否は伯仲
昨年11月に英紙インディペンデントが行った世論調査では、EU離脱を支持する人が初めて半数を超え、賛否は伯仲。保守党と同様に、最大野党・労働党内にも賛否の対立があります。
国民投票は今年6月が有力視されています。投票実施が決まった後は、党派を超えて世論を二分する大規模な投票キャンペーンが始まるとみられます。