2016年1月1日(金)
ASEAN共同体始動
団結の力で役割強化
重層的に枠組み築く
ベトナム外務省ASEAN局のチン・ミン・マイン次長は共同体発足について、「ASEAN統合プロセスの画期をなすものであり、50年近くにおよぶASEANの成熟度を示すものとなる」と強調しました。「共同体設立以前とくらべて、ASEANは“より深く”“より高いレベル”で統合が強化される」と述べています。
マイン氏は、「共同体構築は長期に継続する過程だ」と指摘。「政治・安全保障共同体」は、域内の複雑で急速な変化に即応できる常設委員会、首脳、閣僚、高官級による効率的な協議システムを機構化し、緊急事態以外でも対応できるようにするとしています。
「経済共同体」では、遠距離通信、金融、流通、エネルギー、農漁業、鉱業など重要視される分野で自由化と統合を強化する方向です。一方でマイン氏は、加盟国間での経済共同体に対する意見の相違を踏まえるべきだと語ります。
「社会・文化共同体」ではASEANの重要な政策を、国民本位で考えます。
マイン氏は、欧州連合(EU)と異なりASEANが進める「統合」は、そのカギとして「コンセンサス(全員一致)」が重要だと強調します。
現在、東南アジア・太平洋地域では、南シナ海問題、テロ・暴力問題が懸念されています。マイン氏は、「政治・安全保障共同体はこれらの問題に対処し、平和と安定の環境を維持することに貢献する」と語りました。
中国とフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイの領有権主張が重なる南シナ海問題では、「東南アジア友好協力条約(TAC)や国連憲章、国際法によって認められた諸原則を基礎に域内で行動規範をつくり、適用範囲を拡大していく。中国に対しては、平和的手段、武力の不使用、国連海洋法条約を含む国際法の順守による紛争解決を求め、南シナ海行動宣言(DOC)の履行と(法的拘束力を持つ)南シナ海行動規範(COC)の調印を促す」としています。
1967年にASEANを結成した東南アジア諸国はTACを基礎にして、DOC、26カ国・1機構が参加するASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジア首脳会議(EAS)など、域外国とも平和と安全保障の枠組みを重層的に築いてきました。
1995年には東南アジア非核兵器地帯条約を締結。これを保証する議定書への署名を核保有5カ国に求めるなど、核兵器のない世界に向けた努力も続けています。
ASEANのミン事務局長は「政治、安全保障、経済で団結した力を発揮することによって、ASEANの役割と影響力は地域的にも、世界的にも強まっていくだろう」と展望しています。
(ハノイ=松本眞志)