2015年12月5日(土)
空爆はIS喜ばすだけ
軍事手段でない方法提言
現地取材の独記者が寄稿 英紙
11月13日のパリ同時テロ以後、フランスや英国などが相次いでシリア空爆への参加・強化に踏み切っています。これについて、西側のジャーナリストとして唯一過激組織ISから許可されて支配地域の取材をしたドイツ人記者が、「空爆はIS戦闘員を喜ばすだけだ」と批判する寄稿を英紙に寄せています。現地でIS戦闘員たちに直接インタビューし、彼らの行動を目撃しての結論として、空爆は新たなテロリストを生み出すだけだと警告しました。
この記者は、ドイツで保守政党の国会議員を務めたこともあるユルゲン・トーデンヘーファー氏。英紙ガーディアン11月27日付で、「西側の政治家たちはテロリストの仕掛けたワナに落ち込んでいる」と指摘しています。
同氏はアメリカのブッシュ前政権が始めた「対テロ戦争」について「対テロ戦争が推定100万人のイラク国民の命を奪った後、現在われわれが直面しているのは約10万人のテロリストだ。ISはブッシュの『申し子だ』」と告発しました。
その教訓を学ばないまま、欧米諸国が現在強化しているシリア空爆についても、「子どもが1人殺されるたびに新たなテロリストが生まれる。戦争はブーメランだ。後になってテロの形態をとってしっぺ返しがやってくる」と主張しました。
2014年10月にIS支配地域に滞在した同氏は、米国のジェット戦闘機や無人機の攻撃が迫るたびにISの護衛が素早く地元住民たちの中に消えていったことを紹介。空爆は、地元住民に被害を広げ、新たなテロリストをつくり出し、欧米との直接決戦をのぞんでいるIS戦闘員たちを「歓喜で満たすだろう」と述べています。
同氏は、軍事的手段によらないIS打倒の方法として、(1)湾岸諸国からの武器供給の停止(2)トルコ国境封鎖による戦闘員流入の阻止(3)シリアとイラクの国民的和解の促進―の3点を提言しています。