2015年12月4日(金)
英 シリアで空爆
反戦団体 民間人の被害懸念
下院が承認
英下院は2日夜(日本時間3日朝)、英軍が過激組織ISをシリア領内で空爆することを問う政府提出の動議を賛成397、反対223で承認しました。英労働党のコービン党首、スコットランド民族党のサモンド副党首などが空爆反対の論陣を張り、同日午前から10時間以上の討議が行われました。国会前では、シリア空爆反対のデモが深夜まで続きました。 (伊藤寿庸)
政府提案の動議は、ISが「英国への直接の脅威」だとするとともに、ISのテロを予防するため「必要なあらゆる手段」をとるとした国連安保理決議2249を援用し、英国と同盟国を守ることは「国連憲章にもとづき法的根拠がある」と主張。「シリアに平和と安定をもたらすための広範な戦略の一部」として、「シリアのISに限定した空爆を行う」としています。
これに対しコービン氏は、キャメロン首相の「考え抜かれていない戦争への突進」を批判。対ISの戦略の不在、シリア紛争の外交的解決への無計画、空爆がもたらす民間人犠牲者や難民危機、英国へのテロの脅威ヘの影響などの疑問に首相が答えてこなかったと指摘しました。また国連安保理決議2249は、国連憲章7章に基づいて軍事行動を承認したものではないと述べ、空爆は地上部隊派遣への呼び水となりかねないと警告しました。
サモンド氏は、「(ISの本拠地)ラッカのような人口密集地に空爆して民間人が巻き添えにならないという人は、別の惑星の住人だ」と批判しました。
キャメロン首相が前日の1日、空爆反対派を「テロリストのシンパ」と呼んだことには、多数の議員が謝罪を求めましたが、首相は拒否しました。
採決では、与党・保守党から7人が反対に回りました。労働党は党議拘束をかけなかった結果、153人が空爆反対票を投じ、66人が賛成しました。
反戦団体「戦争阻止連合」は、採決を受けて声明を発表し、英米が始めたアフガニスタン、イラク、リビアでの戦争によって「何百万人が今なお苦しんでいる」とし、「今回の採決によって新たに苦しむ人が何百万人も生まれるだろう」と批判しました。