2015年11月28日(土)
対IS 欧州で空爆反対高まる
パリの同時テロ後、欧州の政府レベルでは過激組織ISに対する空爆や軍事作戦拡大の動きが強まっています。これに対し、英国やドイツの野党や平和団体などは議会内外で反対を表明しています。
英首相主張 野党など反論
キャメロン英首相は26日、過激組織IS打倒のためとして米軍主導の有志連合の一員としてイラクで行ってきた空爆をシリアにも拡大すると下院で発言し、声明を発表しました。しかし労働党のコービン党首やスコットランド民族党などは空爆に反対しており、反戦団体は28日に全国各地で「シリアを空爆するな」とデモを計画しています。
キャメロン首相は、すでにパリでの同時多発テロを受けたオランンド仏大統領との23日の会談で、シリア空爆に言及。この日の声明でも「テロリストを心臓部でたたかなければならない」とし、「安全保障への責任を他人任せにはできない」とシリア空爆の正当性を主張しました。
労働党のコービン党首は、空爆で民間人犠牲者が生まれることや英国へのテロ攻撃の可能性が高まることなどについて首相に質問しました。
また同党首は同党議員への手紙の中で、首相の主張は「説得力に欠け」、「われわれや下院外交委員会が提起した問題に満足な答えを与えていない」として、「支持できない」と断言。(1)国連での調整、IS打倒などの「首尾一貫した戦略」がない(2)空爆強化で奪還した領土を保持できる「信頼でき受け入れられる地上部隊」について説明していない(3)空爆拡大が、シリア内戦の交渉を通じた政治解決に貢献できるのか、英国へのテロ攻撃の脅威にどう影響するかも説明できていない―と批判しています。
スコットランド民族党のロバートソン議員団長も、首相の説明には「納得できない」と表明。与党・保守党の議員の中にも空爆拡大に慎重な姿勢を示す議員が出ています。
英国の反戦団体「戦争阻止連合」は、空爆拡大は「内戦を激化させ、シリア国民の悲惨な状況を深刻にし、テロの危険を増大させる」として、議員に反対票を投じるよう訴え。28日には全国各地でデモを計画しています。 (伊藤寿庸)
独左翼党「軍事的勝利はない」
ドイツの野党第1党、左翼党のバルチ連邦議会(下院)議員団共同団長は25日、下院での代表質問で、メルケル政権が過激組織ISに対する軍事作戦に参加することに強く反対しました。
パリの同時テロを受け、メルケル首相がオランド仏大統領と会談、対ISでの軍事作戦協力を協議していました。バルチ氏は「連帯はイエスだが、軍事作戦参加はノーだ」と述べ、「テロとのたたかいに軍事的な勝利はない」と強調しました。
ドイツがアフガニスタンで対タリバン作戦に駆り出され、「50人以上の兵士が死亡し、(ドイツ軍派兵の結果)数千人のアフガン市民が殺された歴史から何も学んでいないのか」とメルケル首相を問い詰めました。
対ISには、外交的手段と、紛争地域への武器禁輸が重要だとして、ドイツがISを潜在的に支持しているサウジアラビアやカタール、アラブ首長国連邦に戦車など危険な武器を輸出していることが間違いだとただしました。 (片岡正明)