2015年11月24日(火)
ASEAN首脳会議
共同体設立 役割、課題は
【クアラルンプール=松本眞志】22日に閉幕した東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は「ASEAN共同体」を12月31日に設立すると宣言しました。「政治・安全保障」「経済」「社会・文化」の3本柱から成る共同体は、南シナ海問題など直面する課題に取り組みながら、米中など域外国を関与させて、周辺地域も含めた平和と安定で「中心的役割」を果たそうとしています。
戦争放棄の原則堅持
ビジョン |
首脳会議最終日の22日、「ASEAN共同体設立に関する2015クアラルンプール宣言」と、今後10年間のビジョンとなる「ASEAN2025クアラルンプール宣言」が調印されました。
共同体設立について、平和と安全、安定を志向するASEAN憲章の精神をふまえたものであり、戦争放棄を明記した東南アジア友好協力条約(TAC)など重要な諸原則を堅持し、域内統合を促進して恒久平和と安全、弾力性を保証するものと位置づけています。
マレーシアのナジブ首相は22日の閉幕あいさつで、1967年のASEAN結成当時の東南アジアを振り返り、「東南アジアはアジアの“バルカン半島”として、分裂と紛争の発信源だったが、いまや地球規模の紛争を平和的に解決する発信源の一つに浮上した」と評価。「この輝かしい実績はASEANに負っている」と強調しました。
ASEAN共同体設立については、今後の経済発展に期待を表明し、「地域構想の新たな段階」としながら、「地域的統合の終結を示すものではない」と指摘。「政治・安全保障、経済、社会・文化の三つの柱の下で、統合と統一のための困難な活動を倍加しなければならない」と訴えました。
緊張の激化は自制を
安全保障 |
中国が南シナ海で岩礁を埋め立てて人工島の造成を進め、これに対して米国が「航行の自由作戦」としてミサイル駆逐艦を派遣、さらに爆撃機を飛行させたことで、米中間の緊張激化への懸念が強まりました。
南シナ海の領有権問題は、ASEAN加盟のベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの4カ国と中国が直接の当事国。しかし、米国の行動に日本やフィリピンが賛成し、対立が拡大する様相を見せています。
ASEAN10カ国に米中ロ日など8カ国を加えた東アジア首脳会議(EAS)でも南シナ海問題が中心議題となりました。
オバマ米大統領は「航行の自由作戦」を説明した上で中国側に対し、「南シナ海を軍事化しない」との習近平・中国国家主席の言明を実行するよう要求。中国の李克強首相は「域外国は地域情勢の緊張を招く行動を取らないことを約束する」よう求めました。
中国の行動を問題視する一方で、域内での緊張激化を避けたいのがASEAN各国の立場です。ASEAN首脳会議の議長声明は、「すべての関係国が緊張を激化させる行為を自制する」よう訴え。インドネシアのジョコ大統領はASEAN・米国とASEAN・中国の首脳会議で、オバマ氏と李氏に直接、緊張を激化させないよう呼び掛けました。
テロ対策では、ASEAN内のマレーシア、インドネシア、ブルネイといったイスラム教徒の多い国から若者が過激組織ISに参加していることもあり、真剣な議論が交わされました。
マレーシアのナジブ首相は武力のみによる問題解決を否定した上で、「イスラム」の名をかたるテロと真に対決するものはイスラム教「穏健主義」だと主張しました。
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