2015年11月13日(金)
ミャンマー総選挙 NLD圧勝
教育・医療・賃金…“何もかも変えてほしい”
「変革」に期待希望託す国民
ミャンマー上下両院総選挙(8日投票)は、「変革」を掲げた国民民主連盟(NLD)党首のアウン・サン・スー・チー氏が国民の期待を一身に集める結果となりました。民主化、教育、医療、賃金引き上げなど、国民の期待はさまざま。一方で、軍の政治関与を制度化している現憲法下でどこまで「変革」が実現するのか、有権者の声には不安も交じります。 (面川誠)
テイン・セイン現政権は、政治囚の釈放、メディアの自由化、労組の合法化など、一連の改革を推進してきました。経済成長率も10%近くを維持するなど、「実績」を上げてきました。
しかし一方で、教育改革を求めてデモ行進を繰り返した学生を拘束したり、軍を批判した記者を逮捕・投獄したりする事態も相次ぎました。
金持ちだけが
また、統制経済が続いたミャンマーで、1990年代から市場経済導入が本格化しましたが、軍が100%出資する持ち株会社が収益性のある事業の多くを政府から獲得。軍、政府高官、それにつながる事業家らが栄える一方、一般国民の生活は目立った向上がありませんでした。
投票のために一時帰国したという在日ミャンマー人女性は、「経済が良くなったなんて、うそばっかり。金持ちが、どんどん金持ちになっただけ」と憤ります。「日本で働いてミャンマーにいる家族に送金している。家族の生活が全然良くなっていないから」
ヤンゴンの旅行会社で働くミャット・ナイン氏は、「外国からの観光客が増えたから、私個人の生活は少し良くなった」と言います。それでも、「病院はひどい水準なのに、治療費が高い。子どもが通う小学校には教材がほとんどない。何もかも変えてほしい」と願っています。
NLDは1990年の総選挙で議席の8割を獲得しましたが、軍政が政権移譲を拒否。弾圧を受けながら民主化活動を続けました。2012年の補欠選挙では45議席中43議席を獲得。さらに今回の圧勝と、国民の支持は揺らぎませんでした。
軍関与に不安
ナイン氏は「利権や腐敗と無縁だったNLDなら、この国を変えてくれる」と期待していますが、不安も感じています。現憲法では、国防、内務など主要閣僚は軍司令官の任命で、連邦議会の4分の1が軍人指定議席など、軍の政治関与が保証されています。経済的利権を容易に手放すとも思えないと言います。
「変革には時間がかかるだろう。すぐに成果が上がると思い込んではいけないと思う」とナイン氏は語ります。