2015年11月4日(水)
米中緊張の南シナ海
「望まない事態防ぐ」
ASEAN国防相会議開く
【ハノイ=松本眞志】東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会議が3日、マレーシアの首都クアラルンプール近郊で行われました。会議冒頭、議長国マレーシアのヒシャムディン国防相は、南シナ海における米中間の緊張状態をふまえ、「今日の複雑な政治状況(への対応)は、容易な作業ではない。望まない事態が東南アジアで起きるのを防ぐため、連携するのがわれわれの任務だ」と述べました。
同国防相は、域内の平和と安定の共通目標を実現するため、対話を促進し続けることを主張。「各国の国防相は、尊重すべき国家と国民、地域全体の平和と安定を保障する責務を負っている」と会議の目的を強調しました。
マレーシア英字紙ニュー・ストレーツ・タイムズは、議長国マレーシアが、中国との間で紛争激化を避けるための「南シナ海行動規範(COC)」の締結促進や、紛争の平和的な解決を盛り込んだ「南シナ海行動宣言(DOC)」を順守する必要性を訴えることで、緊張を緩和する努力をしてきたと報道。なかでもヒシャムディン氏が「(南シナ海域における紛争)問題が慎重に処理されないならば、東南アジアは世界の超大国の覇権争いに巻き込まれる」との懸念を示したとしています。
米軍は10月27日、中国が人工島を建設し領海を主張している南シナ海・南沙(英語名・スプラトリー)諸島のスービ(中国名・渚碧)礁から12カイリ(約22キロ)内に、イージス駆逐艦を派遣。これに反発する中国との間で緊張・対立状態が続いています。
中国の行動に対しては、ベトナムやフィリピン、マレーシア、インドネシアなどASEAN諸国からも批判が出ています。会議直前には、米国のカーター国防長官が中国への対応で足並みをそろえることをねらい、ASEAN各国外相と2国間会談を実施。中国の常万全国防相とも会談しました。
カーター氏はこれまで、「国際法が許すあらゆる場所で飛行・航行し、作戦を実施すると何カ月も言い続けてきた」と述べ、今後も、艦船などを航行させる意向を示しています。
米中間の緊張の高まりという新たな事態について、インドネシア英字紙ジャカルタ・ポストは、「南シナ海には平和と安定への潜在的脅威が存在する。ASEANは、域内の平和を守る仲介者としての重要で切迫した役割を担っている」と主張しています。
日米中豪韓などの域外8カ国の閣僚も参加する拡大ASEAN国防相会議は3日夜から4日までの日程で始まりました。共同宣言を発表する予定です。