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2015年10月29日(木)

「国民連合政府提案」の現状と展望

日本記者クラブ 志位委員長の講演

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「戦争法廃止の国民連合政府」の「提案」について

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(写真)講演する志位和夫委員長=27日

 日本共産党の志位和夫委員長は27日、日本記者クラブで講演を行いました。

 志位氏は、冒頭、日本共産党が提案している「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」について、説明を行いました。

 日本共産党の「提案」は、「きわめてシンプル」なものであり、次の三つの柱からなっていることを、それぞれについて語りました。

 ――戦争法(安保法制)廃止、安倍政権打倒のたたかいをさらに発展させようという、たたかいの呼びかけ。

 ――戦争法(安保法制)廃止で一致する政党・団体・個人が共同して国民連合政府をつくろうという、政府の提唱。

 ――「戦争法廃止の国民連合政府」で一致する野党が、国政選挙で選挙協力を行おうという呼びかけ。

 そのなかで、志位氏は、「戦争法廃止、立憲主義回復」という政治的合意、それを実行する政府の樹立という政権合意ができたら、選挙協力に思い切って取り組みたいとして、つぎのように語りました。

 「私たちが提案している選挙協力というのは、文字通りの選挙協力です。『選挙区のすみ分け』というような消極的なものにとどまるものではありません。“国民的大義”のもとに選挙協力の合意ができたら、互いに勝利のために全力をあげる、文字通りの選挙協力に取り組みたい。もちろん、わが党としても、選挙協力の合意ができた選挙区については、勝つために必要なことは何でもやるつもりです」

 「選挙協力ですから、当然、その選挙協力に参加するすべての政党にプラスになる、そのような協力をやってこそ、本当にみんなの力が出ると思います。それぞれの政党が、本当に底力を発揮し、自公に打ち勝つことができると思います。そういう選挙協力を目指していきたい」

 そのうえで、志位氏は、「国民連合政府提案」を発表してから1カ月余という時点にたって、現状と展望について語りました。

戦争法廃止の国民のたたかいが、さらに大きく発展している

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(写真)日本記者クラブでおこなわれた志位和夫委員長の講演=27日

 さて、この「提案」を発表してから1カ月余がたちました。私たちの「提案」が反響を呼び、日本の政治の新たな激動の時代が開始されたという感を強くしております。私の感じている特徴点を4点ほど話したいと思います。

 第1は、戦争法に反対する国民のたたかいが、法案の強行によって終わるどころか、この暴挙を新たな出発点にして、さらに大きく発展しているということです。

 たとえば、法案の強行から1カ月の10月18日、学生のみなさんがつくる「シールズ」(SEALDs)が安保法制に反対する渋谷街宣を行いました。渋谷のハチ公前は、若者の熱気でいっぱいになり、「戦争法絶対反対」「野党は共闘」のコールが響きました。

 翌日の10月19日には、「総がかり行動実行委員会」が全国各地で戦争法廃止、安倍政権退陣を求める行動に取り組みました。国会正門前は、歩道を埋める9500人の熱気でいっぱいになりました。「強行採決された(9月)19日の怒りを忘れない」「戦争法を廃止に追い込むため何度でも国会前へ」が合言葉になりました。「総がかり行動実行委員会」では、戦争法廃止の2000万人以上の署名活動に取り組むことを呼びかけていますが、たいへん重要な提起であり、私たちも大いに協力して取り組みたいと決意しています。

 さらに一昨日、10月25日には、戦争法案に反対する行動で大きな力を発揮した学者と学生が協力して、法政大学でシンポジウムを開き、同大学の薩埵(さった)ホールには会場いっぱいの1300人の人々が参加しました。

 私たちは、この間起こっている戦争法反対、立憲主義を守れというたたかいは、戦後かつてない新しい国民運動だと考えています。国民一人ひとりが、自分の頭で考え、自分の言葉で語り、自分の足で行動している。そういう新しい質をもった運動ですから、いま始まっている国民の歩みを止めることは誰にもできません。安倍政権は「時間がたてば怒りを忘れてくれるだろう」とタカをくくっているかもしれません。ある自民党議員は、「お正月に餅を食べれば忘れてくれる」と言ったそうです。しかし、私は、決してそうはならないと、確信しています。いま日本で起こっている運動というのは、必ず日本を変える巨大な流れに発展しうるすばらしい可能性を持った運動だと考えています。

「国民連合政府提案」の方向が、国民のなかで一つの流れになりつつある

 第2に、こうしたなかで、私たちの「戦争法廃止の国民連合政府」という「提案」の方向が、国民のなかで一つの流れになりつつあるということです。

 私たちは「提案」をもって各界・各分野の人々との対話を続けてきました。「提案」に対して、これまでにない広範な方々から、賛同と激励の声をいただいています。もともと、この「提案」というのは、戦争法案に反対する国民のたたかいに私たち自身が参加し、国民のたたかいのなかで寄せられた「野党はバラバラではだめだ。結束して安倍政権を倒してほしい」という痛切な声を私たちなりに受け止め、「この声に応えるには、私たち自身も変わらなければならない」と思いを定めて打ち出したものです。いわば、国民のたたかいのなかから生まれた「提案」だと私たちは考えています。そういうものとして打ち出した「提案」が、ともにたたかってきた多くの方々、さらにいまの政治を変えたいと願っている多くの方々の気持ちと響き合い、歓迎され、賛同をいただいていることは、たいへんにうれしいことであります。

 また、私たちの「提案」に直接言及していなくても、共通の方向を求める声が、あちこちから、さまざまな形であがっています。本気で、戦争法(安保法制)を廃止し、日本の政治に立憲主義・民主主義を取り戻そうとすれば、それを実行する政府をつくる必要があるし、そのためには野党が国政選挙で選挙協力を行う必要がある――誰が考えてもこうした方向が理の当然として出てくるのではないでしょうか。

 私たちの「提案」は、日本の現在の政治の危機的現状を打開するための、一つのたたき台を示したものにすぎません。たとえば、政府の名称として「国民連合政府」としていますが、これは仮称にすぎません。みんなで決めればいいと思っています。私たちの「提案」を、一つのたたき台にしていただいて、こういう方向を求める流れが広がっていく、そしてこういう方向での国民的合意が広くつくられていくことを、私たちは強く願うとともに、そのために知恵と力をつくしたいと決意しています。

 最近の朝日新聞の調査では、「来年の参院選で、野党は、自民党と公明党に対抗するために、選挙で協力するべきだと思いますか」との問いに、「選挙で協力するべきだ」と答えた方が48%に達するという調査もあります。私たちの「提案」が投じた一石によって、「野党は共闘」ということが、一つの流れになりつつあるのではないでしょうか。

野党間の話し合い――一歩一歩、粘り強く話し合いをすすめ、合意を達成したい

 第3に、野党間の話し合いについてのべたいと思います。

 私は、この間、民主党の岡田克也代表、社民党の吉田忠智党首、生活の党の小沢一郎代表と党首会談を行ってきました。社民党と生活の党とは、私たちの「提案」の方向で、大筋の方向性が共有できたと考えています。民主党の岡田代表との会談では、先方から「思い切った提案に敬意を表する」との発言があり、同時に、政権をともにするのはハードルが高いという議論もあるというお話もありました。「今後も話し合いを行う」ことで双方が一致しています。岡田代表とは、誠意を持ち、互いの信頼感を大切にして、話し合いを続けていきたいと考えています。

 今日、岡田代表は、この日本記者クラブで行った会合で、「参議院選挙に向けて共産党とどういう関係を築いていくかということは非常に大事なことだと思っています」「じっくりとこれからも共産党とは話をして、少しでもいい結果につながるように努力していきたいと考えています」という発言をされています。私も、よく話し合って前向きの合意が得られるように努力したいと思っています。

 私たちが、たいへんに重要な動きだと考えているのは、10月16日、民主党の枝野幸男幹事長の呼びかけで、戦争法案(安保法制)に反対してきた諸団体と共産、民主、維新、社民、生活の野党5党が意見交換会を行ったことです。この意見交換会では、国民の運動や関心をさらに高め、来年夏の参院選挙での野党共闘の実現などに向け、課題や展望が語り合われました。そして、今後は、野党5党の呼びかけで、この諸団体との定期的な意見交換会を開くことを確認しました。

 もともと私たちが提案している「国民連合政府」は、政党だけではなく、団体、個人が共同してつくるものです。そういう点で、こうした意見交換会が始まったことはきわめて重要であり、私はこうした話し合いを真剣に続けていけば、前向きな結論を得ることは可能だと考えています。その点で、最初の会の開催を呼びかけた民主党執行部に私は心からの敬意を申し上げたいと思います。

 もう一つ、重要な動きだと考えているのは、10月21日、野党5党が共同して、政府に、臨時国会召集要求を行ったことです。戦争法(安保法制)の問題、TPP(環太平洋連携協定)の問題、第3次安倍改造内閣の新閣僚の所信をただすことなど、緊急に議論すべき課題は山積しており、政府は、国民に対する説明責任を果たす義務があります。野党5党の要求は、憲法53条にもとづいて提起したもので、これに背くとなれば憲法違反となり、ここでも立憲主義に背くことになります。私は、この場でも、強く開催を求めるものです。

 同時に、こうした野党5党の共闘の積み重ねは、それ自体大きな意義があります。もともと私たちの「提案」は、戦争法案に反対する野党共闘の実績を踏まえて打ち出したものであり、直面するさまざまな課題で野党共闘を一つひとつ積み重ね、相互の信頼関係を強めていくことは、今後にとってきわめて重要だと考えています。

 野党間の合意は、早く実現すればそれにこしたことはありませんが、一定の時間がかかると思います。それぞれの党には、それぞれの事情があるだろうと思います。私たちの党にとっても、93年の歴史のなかでも、なにぶん初めての経験ですので、不慣れなことや試行錯誤もあるかと思います。もちろん選挙には間に合わせなければなりませんけれども、多少、長い目で、温かくみていただけるとありがたいです。さまざまな困難があると思いますが、一歩一歩粘り強く話し合いを続け、必ず合意を達成したいと考えています。

国際的反響――北東アジアの平和と安定にも大きな貢献となる

 第4に、私たちの「提案」に対する国際的関心・反響について、若干、のべたいと思います。

 私は、10月15日、日本外国特派員協会に招待され、「国民連合政府」の「提案」についてお話しいたしました。外国人の特派員のみなさんからも、私たちの「提案」が一定の現実性を持った提案として受け止められ、予定の時間をオーバーする熱心な質疑が続きました。

 つづいて私は、10月20日から23日まで、韓国を訪問いたしました。韓国・ソウルにある建国大学から、戦後70年、日韓国交正常化50年を記念して、私を招いていただいて講演会の企画があり、講演を行うことを目的とした訪問でした。同時に、日韓・韓日親善協会と韓国民団のみなさんが主催する日韓親善の集いに招待され、ごあいさつする機会もありました。また、韓日議連の金泰煥(キム・テファン)会長代行との会談も行いました。さらに、韓国メディアとの関係で、さまざまな形での会見や取材を受ける機会もありました。

 全体を通じて感じたのは、韓国でも、日本で起こっている戦争法(安保法制)に反対するたたかいは報道され、よく知られているということです。若者たちが立ち上がっていることも報道され、関心を集めている状況があります。

 そういうもとで、私たちの「国民連合政府」の「提案」にも、強い関心が寄せられました。韓国メディアとの記者会見では、主にこの主題について話しましたが、私たちの「提案」が韓国との関係、北東アジアの平和との関係でどういう意味をもつか、日本の運動と韓国・中国などの国民との連携が可能かなど、たくさんの質問が寄せられました。そして、知識人や学生の方々からは、私たちの「提案」に対して、「ぜひ成功させてほしい」との強い期待が寄せられました。

 韓国での一連の交流でも語ったことでありますが、私は、「国民連合政府」を実現することができれば、それは、日本にとって、日本国憲法にもとづく立憲主義、民主主義、平和主義を取り戻し、すべての国民の「個人の尊厳」を守り、大切にする社会に向けての大きな一歩を踏み出すことになるとともに、北東アジアの平和と安定にとっても大きな貢献になると確信するものです。

 この歴史的チャレンジを必ず成功させ、日本の政治に希望ある新しい時代を開くために全力をあげたいと決意しています。

宮城県議選の躍進――安倍政権への怒りの深さ、野党共闘の重要性を示す

 講演の後、会場から多くの質問が寄せられ、志位氏は一つひとつに丁寧に答えました。質疑のなかから、10月25日に行われた宮城県議選について受け止めを問われ、志位氏がのべた内容について紹介します。

 宮城県議選で、日本共産党が、4議席から8議席に倍増することができまして、喜んでおります。ご支持・ご支援していただいたみなさまに、心からの感謝を申し上げたいと思います。

 この選挙を通じて感じていることを2点ほど話したいと思います。

 一つは、安倍政権の国民の民意そっちのけの暴走に対する怒りは深いということです。とくに、戦争法(安保法制)の問題、TPPの問題に対する怒りがたいへんに深い。与党の側は、こうした「国政の問題は争点にならない」ということを言ったわけですが、まさに大争点になったわけです。そして審判が下った。これは非常に重要な意味を持つのではないかと思います。

 いま一つは、日本共産党の躍進にかかわっていいますと、あちこちで“勝手連”的な支援をしてくださる動きがたくさん起こりました。保守の方々、無党派の方々を含めて、自発的に共産党を応援してくださるという流れが起こりました。こうした動きというのは、いまの安倍政権の暴走に対する深い憤りと怒り、「何とか政治を変えたい」というところから起こっているものだと思います。

 ですから、“国民的大義”のもとでの野党のしっかりした選挙協力が実現すれば、私は、こうした自発的に野党を支持してくださる動きというのは、画期的に広がるだろうと考えるものです。いよいよ野党共闘が大事だということが、今回の選挙の重要な教訓ではないかと思います。


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