2015年10月27日(火)
難民施設10万人分新設へ
欧州首脳会議 積極受け入れには至らず
【パリ=島崎桂】欧州連合(EU)は25日、ブリュッセルで緊急の首脳会議を開き、欧州で急増する難民への対応を協議、ギリシャなどのバルカン諸国に難民10万人分の一時収容施設を新設するなど17項目の行動計画で合意しました。ただ、難民問題での各国の溝は埋まらず、積極的な難民受け入れ体制の構築には至りませんでした。
会議には、多くの難民が最終目的地とするドイツや、経由地となっているバルカン・中欧諸国などEU10カ国のほか、EU非加盟のアルバニア、マケドニア、セルビアが参加しました。
新設が決まった10万人分の施設のうち、5万人分はギリシャに設立されます。同国政府は、年末までに3万人分の施設設立を承認。会議に参加した国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、同国に2万人規模の施設を提供します。
会議ではこのほか、各国間の情報共有や国境管理の強化、難民申請を却下された人々の本国送還の促進で合意。ハンガリーの国境封鎖で難民が急増しているスロベニアに警官400人を派遣し、対応にあたることも決めました。
ただ、各国首脳は、難民に欧州行きを「思いとどまらせる」ことでも一致。国境閉鎖に動く一部諸国への対応策や、積極的な難民受け入れの具体化には至りませんでした。
ドイツのメルケル首相は会議後、「欧州は連帯の大陸だと示さなければならない」と述べる一方、難民危機の解決には「より多くの時間がかかる」との見通しを示しました。
冬の到来を受け、徒歩移動や野宿を余儀なくされている難民の生命にも危険が迫っています。今年中に100万人規模の難民が欧州に到着すると予測される中、国際人権団体からはEUの消極姿勢や無策を批判する声が上がっています。
アムネスティ・インターナショナルは声明で、冬の到来とともに「人道的危機が迫っている」と懸念。ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)も「EUが共同して難民危機に対処しない限り、多くの難民が欧州の国境で死亡することになる」と警告しました。