2015年10月23日(金)
イスラエル首相発言 内外から批判の声
「イスラム指導者がユダヤ虐殺勧める」
“歴史をゆがめる”
【カイロ=小玉純一】ドイツ・ナチス総統ヒトラーのユダヤ人虐殺、ホロコーストはパレスチナのイスラム教指導者が説得したものだ―。イスラエルのネタニヤフ首相が20日、エルサレムでこう発言し、内外から強い批判を受けています。
イスラエルの野党やホロコースト専門家は、歴史をゆがめていると首相を批判。米国務省報道官も「学術的証拠がない」と語りました。
ネタニヤフ氏は発言後、ベルリンを訪問。同氏と21日に共同会見したドイツのメルケル首相は「ヒトラーにホロコーストの責任があることを誰しも否定すべきでない」「歴史を変える理由はない」と述べました。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は「歴史をゆがめ反パレスチナに利用している」と批判しました。
ネタニヤフ首相の発言は、イスラエル占領下のパレスチナで双方の緊張が高まり、衝突が増えているなかでのことです。10月1日以来、イスラエル人の死者は9人。パレスチナ人の死者は53人となっています。
首相の発言はシオニスト会議での演説でありました。「ヒトラーは当時、ユダヤ人を絶滅させたくなかった。追放したかったのだ」と述べ、エルサレムのムフティ(パレスチナのイスラム教指導者)だったハジ・アミン・アルフセイニ師が1941年、ベルリンでヒトラーに赴いて説得した会話として紹介しました。
師「ユダヤ人を追放しても、全員パレスチナに戻ってくる」
ヒトラー「ではどうすべきなのか」
師「焼却せよ」
首相のこの説明に対しイスラエルの歴史学者が早速、反論。新聞紙上でヒトラーはすでに1939年1月、ライヒスターク(ナチスドイツの国会)で、ユダヤ人種絶滅の決意を演説しており、ユダヤ人の殺害ないし焼却をヒトラーに最初に語ったのがムフティだったというのは間違いと指摘しました。
ホロコースト犠牲者を追悼するイスラエルの国立記念館ヤドバシェムの主任歴史学者でテルアビブ大学教授のディア・ポラット氏は「ヒトラーがムフティに会うはるか以前から、ユダヤ人を世界から一掃するという考えは、ヒトラーのイデオロギーの中心テーマだった」とラジオで語りました。