2015年10月14日(水)
韓国 歴史教科書を国定化
世論の反対押し切り
韓国教育省は12日、中学・高校の歴史教科書について、政府機関が編集する「国定教科書」に統一する方針を明らかにしました。略称を「正しい歴史教科書」とし、2017年から導入する予定です。
これまで父母や学生、教師、歴史研究者らは、「民主主義に逆行する」「教育の自由が制限される」などと強く反発しており、政府は反対世論を押し切る形で、国定化を決定しました。
黄祐呂(ファン・ウヨ)教育相は記者会見で「政府の編集では(過去の政権の)独裁を美化したり、特定の人物を偶像化したりするのではないかという批判がある」と述べ、「未来の青少年たちに、正しい国家観とバランスのとれた歴史認識を育てていくことができるよう、憲法精神の客観的な事実に立脚した教科書を作る」と強調しました。
ソウル市内では同日、全国466の市民団体などで構成する「韓国史教科書国定化阻止ネットワーク」が記者会見を開き、国定教科書の白紙撤回を目指して最後までたたかうと決意表明しました。
また、最大野党の新政治民主連合は、「教育の自主性・専門性・政治的中立性を確保した憲法第31条第4項に違反する」として、黄教育相の解任決議案を国会に提出。与党セヌリ党は、国定化を歓迎するとともに、解任決議案提出の理由が不透明だと批判しました。
韓国では、1974年まで検定制度でしたが、軍事独裁政権の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の下で国定化が導入されました。その後、民主化を経て検定制度に移行した経緯があります。
(栗原千鶴)